一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

あさひなぐ

私的評価★★★☆☆☆☆☆☆☆

映画『あさひなぐ』 DVD スタンダード・エディション

 (2017日本)

 二ツ坂高校に入学した東島旭(西野七瀬さん/乃木坂46)は、中学まで美術部で大の運動嫌いだったが、2年生の先輩・宮路真春(白石麻衣さん/乃木坂46)の凛とした強さに魅了され、薙刀部に入部する。だが、思っていた以上に部の稽古は過酷で、旭はついていくのが精一杯という体たらく。まもなく3年生たちにとって最後の大会となるインターハイ予選が始まると、二ツ坂高校は順調に勝ち進み、決勝戦でライバルの國陵高校と対戦する。二ツ坂はエースの真春が1本しかとれなかったが、そのリードを保ったまま最後の大将戦まで持ち込んだ。國陵の大将は旭と同じ1年生の一堂寧々(生田絵梨花さん/乃木坂46)、引き分けでもインターハイ進出という状況だったが…。やがて、3年生が抜け、夏休みに入ると、新生薙刀部は夏合宿に出かけることになる。そこでニツ坂の部員たちを待ち受けていたのは、白滝院住職で教士の資格を持つ寿慶(江口のりこさん)の厳しい指導だった…。


 えっと・・・乃木坂46のPV・・・ですか? さすが、今をときめくアイドルの映画。ひとりで見ていて、ケツの穴がむずむずするような、恥ずかしさを覚え、特に前半は画面を正視できませんでした^^;


 アイドル映画っていう言い方、いいのか悪いのか分かりませんが、ある意味、主演のアイドルが輝いて見えれば、それで大方OKなのかもしれません。
 80年代のアイドル映画は、一人もしくは数人のアイドルが主演なので、脇の俳優陣がしっかり絡めば、なんとか普通に映画として鑑賞できました。
 21世紀のアイドルはグループが大勢を占めていて、中でも秋元康さんがプロデュースするグループはいずれも数十人以上の大所帯です。がぜん、主演映画となれば、そこそこの数のメンバーが、主要なキャストを占めることになります。この映画も出演時間で見て、乃木坂46以外で主要なキャストは寿慶役の江口のりこさんくらい。その江口さんですら、アイドルと絡む出演時間は、2時間の映画の尺からすると極わずかとも言える配分です。こんな状況で、ちゃんとした映画に仕上げるには、アイドルたちの演技の技量以前に、脚本と演出がしっかりしていないと、話になりませんが・・・結果は、残念というしかありません。大好きな女優の江口さんも、ムダ使いとしか思えませんでした。やはり、乃木坂46のPVでしかなかったのか?


 アイドルたちの演技力については、本業ではないでしょうし、時間のない中での製作でしょうから、セリフの間が悪いとか語っても意味がありません。まぁ、それでも主要なキャスト同士のやりとりは、ギリ思ったほどひどくはない、と感じました。
 ストーリーのつなぎ方が雑な気がしました。なんでこんなに単調に感じたんだろう? 淡々とぶつ切りのエピソードを、ただただつないでみました的な薄っぺらい印象。
 コメディっぽい演技のはさみ方も雑に感じました。ストーリーがスポ根の王道なのに、ことごとくスポ根的な感動を茶化す、みごとに現代的にライトな感じ。
 とにかく、ここぞというときの人と人との関わり方・絡み方が雑です。特に部活メンバー6人に対して、正直、感情移入できる過程を、すべてすっ飛ばかしてる気がしました。また、前半で意味深に森永くんが絡んでくるシーンとかも、居心地の悪さしか感じられませんでした。なんでそんな演出なの? じとっと見つめてるようにしか見えない登場の仕方とか、かなり気色悪かったよ。
 薙刀のシーンになると、みんな腕が細くて華奢な体つきだなぁと思います。力感の無さはいかんともしがたいとは言え、カメラワークや演出でもう少し迫力をプラスできる手法があるだろうに、という気がしました。
 ストーリー的にもっとも違和感を覚えたのは、旭は、いつ強くなれたの?ってところ。その過酷な練習過程は、夏合宿以外すべて端折られてるのに、唐突に真春に決闘を申し込んで「あんなことやこんなことをして強くなりましたから」って口で言われても・・・いやいや、カンタンに打たれて、口だけかよ、ってオチでいいの? やはり、スポ根を茶化してる感じ、否めないのです。
 あと、中身の薄さを誤魔化すかのように、終始BGMがうるさい。特に感動系のBGMを、そうでもないシーンにまで引っぱり過ぎてると感じました。試合中のBGMも、うるさくて仕方なかった^^; メリハリの無さの原因は、BGMの途切れなさにもあったかも知れないですね。

 実際に薙刀部で活動している生徒や指導者の方たちは、この映画を見て、何を感じるのでしょう? マイナーな部活の薙刀が脚光を浴びてうれしい、なのか、薙刀なめんなよ、なのか、よく分かりません。そこまで目くじら立てるほどのこともないのかもしれませんが、実写化に当たって、原作者のこざき亜衣さんが、「より沢山の人にこの競技を知って貰う機会を作る事が恩返しになると思い」OKしたとツイートしてるそうなので、いい方向で効果を出せてるならいいですね。

 たぶん、演出が変われば、すごく印象が変わるだろうに、どこかハンパ感否めず残念、という感想です。
 あと、昨今流行の前後半2本分に尺を分けて、しっかり作品として仕上げてほしかった、そんな気もします。


●監督・脚本:英勉 ●原作:こざき亜衣(コミック「あさひなぐ」/小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」連載)