一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

追憶

私的評価★★★★★★★☆☆☆

追憶 Blu-ray 豪華版(Blu-ray2枚組)

 (2017日本)

今日も無事に終わりました。ありがとうございました。

 25年前、冬の能登半島の漁師町。親に捨てられた13歳の四方篤は、軽食喫茶〝ゆきわり草〟を営む仁科涼子(安藤サクラさん)に預けられ、同じような境遇の田所啓太、川端悟とともに、ささやかな共同生活を送っていた。店の常連客で電気店を営む山形光男(吉岡秀隆さん)に心を寄せており、三人の子どもたちも光男を慕っていたが、ある事件をきっかけに、涼子と三人は二度と会わないことを約束し、みな離れ離れになってしまう。25年後、篤(岡田准一さん)は富山県警の刑事になって腕を揮っていたが、流産した妻(長澤まさみさん)とは別居状態、幼いころに捨てられた母(りりィさん)とは金の無心で関係をこじらせ気味と、散々な私生活を送っていた。ある日、ラーメン屋で偶然悟(柄本佑さん)に声をかけられた篤は、その日遅くまで二人で酒を酌み交わした。東京でガラス店の婿養子になり、先代を継いで店を切り盛りしていた悟は、資金繰りに困り、金策のため能登で建設業を営む啓太(小栗旬さん)に会いに来たという。泥酔した悟を宿泊先のカプセルホテルまで送った篤は、別れ際に財布にあった紙幣を鷲掴みにし、「何もしてやれないけど……」と言いながら悟に手渡した。ところが、翌日、漁港に放置されたレンタカーの傍らで、悟は刺殺死体として発見される。篤は悟との関係を言い出せないまま捜査に加わり、東京の悟の店を訪ねる。やがて、捜査が進むうちに、篤は啓太とも25年ぶりに会うことになり、三人が離れ離れになるきっかけとなった過去の事件とも向き合わざるを得なくなるのだった……。


 冬の能登半島のイメージは、『ゼロの焦点 - 一応、邦画劇場』を思い出す。
 現在の富山、能登日本海べりの風景も、土ばかりが目立って、人の営みを拒絶する自然の厳しさの名残を感じずにはいられない。
 途中途中で回想される25年前の能登の人々の暮らしぶりは、どう見ても昭和30~40年代。吉岡さんが出演しているせいで『ALWAYS 三丁目の夕日 - 一応、邦画劇場』かと見まがうばかりだ。
 とにかく、暗く、重い映画になりそうな予感。
 なので、あんまり意気込まずに、適当に見始めた。


 捜査は、思いのほか淡々と進んでいく。
 どうしても封印できずに持て余していた過去の自分に向き合い、単独で啓太の元を訪れる篤の葛藤。
 悟を殺害したのは啓太なのか?
 しかし、物語は思わぬ方向に転がってゆく……。
 気がついたら、泣いていた。思わず知らず、涙がこぼれていた。
 その筋書き、あざとい。そんな見方もあるかもしれない。
 しかし、俳優陣の演技がすばらしく、すっかり映画の世界に引き込まれてしまっていて、もう、中盤から泣ける準備はできていたんだと思う。

 ヒューマンドラマとして、佳作だと思う。


●監督:降旗康男 ●原案・脚本:青島武瀧本智行 ●音楽:千住明