一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

夜を探がせ

私的評価★★★★★★★★☆☆

f:id:vgaia:20190906001148j:plain
夜を探がせ(日本映画専門チャンネル公式サイトより引用)

 (1959日本)

 戦争の闇を描く、石原慎太郎の同名小説を映画化したスリリングなアクション。
 貧しい生活の只中で麻薬密売の仕事を請負う佐伯(鶴田浩二さん)は、警察からの逃亡中に瀕死の重傷を負う男(大友伸さん)から、旧陸軍の秘密書類が隠された万年筆と“脇坂”という名を託されるが、その人物(千田是也さん)が巨万の富を築く大企業の社長と知り、令嬢の美奈子(白川由美さん)に接近する。(日本映画専門チャンネルのあらすじから引用)


 BS日本映画専門チャンネルで鑑賞しました。
 未ソフト化でしょうか? ググッても原作本しか出てきません。
 モノクロームの作品で、現存する原版の最も状態の良いものをテレシネしたということで、確かに一部に映像の乱れがありますが、概ね良好な画質でした。

 〝夜を探せ〟じゃなくて〝夜を探がせ〟なんですね。石原慎太郎さんの原作が〝探がせ〟という送りなんでしょう。この時代はこうで正解だったんでしょうかね?

 クライム・サスペンス、アクション、ラブ・ロマンス。娯楽映画の主要要素を押さえた鶴田浩二さん主演の快作です。
 いつ命を狙われるかというサスペンスの連続で、なかなかスリリングな展開。99分という短めの尺ながら、脚本もしっかりしていて、ギッシリ中身が濃く詰まっている感じでした。
 戦争の闇を描いた、という点では『電送人間 - 一応、邦画劇場』も似たような事件が戦時下で起こったことで、電送人間による犯罪が引き起こされるという設定でした。いずれも戦後から15年くらい経った頃のお話、時代的にはまだ太平洋戦争を経験した世代が社会の中心を担っていたころ、戦時下のことも、生々しく記憶に残っている方が大勢いらっしゃったのでしょう。そういう時代の映画ということです。

 どーでもな話ですが、佐伯と美奈子がナイターで野球観戦をするシーンがあります。
 後楽園の巨人戦のチケットが大写しされたのですが、肝心の対戦相手が書いてありません。実際グラウンドの映像を見ても、対戦相手のチームは不明でした。その時代に生きていた野球ファンの方には一目瞭然なのかも知れませんが、地味めなユニフォームだし、背番号の上に選手名が無いし、予想では大阪タイガースかとは思うんですが、分かりません。巨人のピッチャーは背番号18、その年27勝をあげて最多勝利を受賞したエース・藤田元司さんのようでした。試合は背番号3、プロ2年目の4番打者、長嶋茂雄さんのホームランで決したかのような展開でした。
 脱線しますが、この年、ぶっちぎりで5連覇となるリーグ優勝を果たした巨人は、日本シリーズで、南海ホークスに4戦全敗で敗れます。立ちはだかったのは、立教大学時代の長嶋選手の同期で同じくプロ2年目のエース・杉浦忠さんで、2戦目に3人目のリリーフで勝利投手となったほか、第1戦、第3戦、第4戦はすべて先発で勝利投手になり、ひとりで4勝すべてを勝ち取るという大車輪の活躍でした。ちなみに、杉浦さんのこの年の成績は、現代野球では到底考えられないような38勝4敗で、最多勝利はもちろんのこと、最高勝率(.905)、最優秀防御率(1.40)、最多奪三振(336個)の投手4冠に加え最高殊勲選手に輝くという、大活躍でした。
 あ、そうそう。野球観戦のシーンで気になったのは、こっち。お二人が瓶入りの清涼飲料水をストローで飲む様子が映し出されるんですが、瓶のくびれ形状からして、おそらくコカコーラでしょう。瓶のコカコーラをストローで飲むなんて、なんか新鮮な画でした。


鶴田浩二さんと白川由美さんのロマンスというと、この作品を思い出します。翌年の作品ですが総天然色になってましたね。
vgaia.hatenadiary.org


●監督:松林宗恵 ●脚本:池田一朗松林宗恵 ●原作:石原慎太郎(小説『夜を探がせ』/光文社刊)