一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

三尺魂

私的評価★★★★★★★★☆☆

三尺魂 [DVD]

 (2018日本)

 ネットで知り合い、集団自殺のため山小屋に集った4人。呼びかけ人のハンドルネーム〝ハッパ〟(津田寛治さん)が待ち構えていると、ハンドルネーム〝ベイビードール〟(木ノ本嶺浩さん)なのに若い男性が入ってきて、続いて三十路くらいの女性〝ツバサ〟(辻しのぶさん)が少し遅れて到着する。待ち合わせの時刻を15分ばかり過ぎ、深刻な表情を浮かべた3人が、小屋の中央に据えられた三尺玉の花火を見つめる中、〝ハッパ〟が自殺の方法を説明し始めたところに、明らかに女子高生と思われる制服姿の〝月子〟(村上穂乃佳さん)が、遅刻の気まずさを打ち消すように、少し微笑みながら小屋の扉を開ける。未成年者の登場に動揺した大人たちは、ルール違反を知りながら〝月子〟に自殺の理由をあれこれ聞き出して、彼女を思いとどまらせようとするが、逆上した彼女は三尺玉の花火の点火スイッチを押してしまい、4人は小屋ごと吹っ飛んでしまった……はずだった。ところが、気が付くと時間が集合前に戻っており、その後何度も爆発を繰り返すが、誰も死ねないまま4人は地獄のようなタイムループにはまり込んでしまうのだった……。


 ネットで知り合った自殺志願の4人が、呼びかけ人の花火師の三尺玉の花火で集団爆死自殺を図るんだが、なぜか爆発のたびに集合前の時間に戻るというお話。時間が巻き戻されているようで、まず〝ハッパ〟が、生々しい爆発の痛みとともに、山小屋に入って来る他のメンバーの顔と名前を覚えていることから、時間が集合前に戻っていることに気づき、続いて〝ベイビードール〟が、〝ツバサ〟が、タイムループにはまっていることに気づくのだが、〝月子〟だけがその事実を承知しないまま、繰り返し繰り返し逆上して花火の点火スイッチを押してしまうという展開。

 ありがちな密室劇は、何やら演劇の舞台を見ているようでしたが、4人の演技がうまくて、すっごくのめり込んでしまいましたwww
 あまりのバカバカしさに、3回目くらいまでは吹き出すように笑ってしまいましたが、徐々にそれぞれの身の上が知れるようになると、微妙に4人の関係が変化していき、その都度〝月子〟がどう反発するのか、ハラハラしながら先が気になってしかたなくなりました。なんか、中毒性があるかも知れません。いや、テーマ的にこう言っては不謹慎だけど、ホント、面白い。


 決して〝生きる意味〟が分かるワケでもないし、なんで自殺を思いとどまるかも分かりませんが、この極限的な状況で3人の大人たちがいろいろ話をするうちに、未来志向な雰囲気をかもしてくる展開は、実生活でも有意味なんだろうと思います。社会的にゲートキーパーの役割を担うポジションの方は、自殺予防の啓発ドラマだけじゃなく、こういうエンタメに寄っていながらリアルなやり取りを行う場面に触れる映画も見ておいてイイんじゃないかと、ちょっと思いました。人間には〝熱〟が必要なんだなと。


 予定調和的な終わりで良かったんだけどねぇ。なんか山小屋出たあとに、未来の4人が出てきて、ちょっと道徳番組臭くなってしまい、なんでそんな陳腐な映像挟んでしまったんだろう?みたいに思えたので☆2つ減点しちゃいました。ただ、最後の最後のオチで、ちょっとふふって笑っちゃったので、★8つで留めておきます。


●監督・原案・脚本・編集:加藤悦生