一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

雲のむこう、約束の場所

私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆

劇場アニメーション「雲のむこう、約束の場所」 [Blu-ray]

 (2004日本)

「要するに、あれだろう? 神様の見ている夢を覗き見て、夢判断をしたいってことだろう?」

 戦後、津軽海峡を境に分断されたもうひとつの日本。〝ユニオン〟が占領する北海道に、雲まで達する目的不明の奇妙な塔が建設され、本州以南を統治する米国との間に軍事的緊張をもたらしていた。そんな中、青森で暮らす中学生、ヒロキ(声:吉岡秀隆さん)とタクヤ(声:萩原聖人さん)は、塔まで飛ぼうと自力で飛行機を作り始め、2人はひそかに憧れていた同級生のサユリ(声:南里侑香さん)に飛行機で塔まで連れて行くと約束する。しかし、中学3年生の夏、突然サユリが東京に転校し…。(WOWOWの番組内容から引用)


 新海誠監督の劇場版アニメ第2作だそうです。
 15年前の作品、まだ劇的にリアルな背景画ではありませんが、それでも雰囲気のある美しい画面です。いや、むしろこのころの手描き感たっぷりの柔らかい印象の方が、個人的には好みかも知れません。


 ストーリーが、難解だと感じました。
 冒頭、今のヒロキが青森の思い出の地へ帰ってきて、ひとり回想を始める。以降、回想の中で、中学時代から大人になって約束を果たすまで、ストーリーはその過去の時間軸に沿って、進むワケです。
 たぶん、冒頭のシーンは、約束を果たしてから、さらに何年もあとなのでしょう。ヒロキ一人しかいなかったのは、なぜ?
 ストーリーを見終わったあと、そこだけが、すごく気になりました。

 もともと太平洋戦争後、ソ連アメリカに分割統治されたままの日本という仮想世界の設定がなかなか馴染めないところへ持ってきて、ヒロキの回想(冒頭のシーンが現在とすれば、今のヒロキが回想している過去のヒロキの回想になっちゃう)と、その回想の中に出てくるサユリの夢の世界とが、仮想の分断された日本という現実世界と前後して入り混じるように出てくるため、一瞬でもボサッとしてたら、何が何やら意味不明になって(回想の中のヒロキも、夢から覚めたら自分がどこにいるのか分からないと言ってますが)、物語から置いてかれてしまいます。

 しかも、軍事施設や研究施設などでは、耳に馴染まない専門用語(これもこの世界だけで通用する用語なのかしら?)がバンバン飛び出して、奇妙な塔のことや分断された日本を取り巻く世界情勢のことなどを解説してくれますが、当然アタマの中にすんなりとは入ってきません。とにかく、物語を進めるための、登場人物による説明が随所に出てきて、長々と説明されても、結局理論的な意味づけが、よく分からない。という感じです。こういう世界観の物語が好きな方々にとっては、至極当たり前のおやつなのかも知れませんが、作者自身の妄想でどうにでも設定をできる仮想世界を、そういった分野のお話に関心が薄いボクなんぞには、なかなか受け入れがたいな、見てて拒絶感を覚えるな、という印象でした。

 そのため、なぜ約束を守らないといけないのか、約束を守るということが、本当にサユリを助けることになるのか、さらに、それが世界を守ることと天秤にかけられるほど究極の選択なのか、という肝心なことが理解できなくて、約束を守るための一連のミッションの意味づけも分かりませんでした。

 そもそも、憧れから始まったサユリへの思い、中学3年で分断してしまったその思いが、なぜそこまでヒロキを約束を果たすことへと駆り立てていったもんか、その辺が、ちょっとよく分かりませんでした。夢でつながっていたことが、現実のコミュニケーションと同等だと信じるに足る根拠、ありましたかね? こんなに夢か現実か幻か、という虚実入り混じったような進行の中で、主にヒロキの独白で語られるその主観的なパートの内容を一方的に妄信できない、というか、観念的過ぎて理解できない、だから、ヒロキの思いや行動に共感しづらい、そう思いました。


 なんだか、新海監督の自己満足に付き合わされた気分で、微妙。消化不良です。
 なんと言うか、『ほしのこえ - 一応、邦画劇場』と同じく、戦時下という極限的な状況下で描かれるような物語の世界観は、苦手です。
 時をおいて、見返したら評価が変わるかも知れませんが、とりあえず、2回見たけどなんとも言えず★4つで。
 


●監督・原作・脚本:新海誠