真夜中まで
私的評価★★★★★★★★★★
(1999日本)
PM10:35ライヴハウス
(DVDパッケージから引用)
イラストレーターをはじめ映像作家として有名な和田誠さんが、10月7日に亡くなられていたことが、今日のニュースで報じられました。
和田さんのほのぼのとしたタッチのイラストは、週刊文春の表紙で有名ですが、学生時代は文庫本の表紙などでもお馴染みの方でした。
映像作品にも多く関わっておられ、映画監督としても、『快盗ルビイ - 一応、邦画劇場』などで数々の賞に輝いておいででした。
本作は、和田さんが監督としてメガホンを取られた、初のオリジナル脚本作品です。
真田広之さん演じるジャズマンの守山が、ステージの休憩時間のわずか1時間余りの間に、とんでもない事件に巻き込まれ、夜の街を縦横無尽に駆け巡るはめに陥ってしまうお話。
トランペットを抱えたままの真田さんの逃走劇、さすがの若き日のアクション・スターぶりを遺憾なく発揮しています。
冒頭、ステージで演奏する〝Round Midnight〟に合わせて、隣のパーキングビルで起こる殺人事件の様子が挿入されます。実にスムーズで、カッコいいカット割です。
全編を彩るスタンダード・ジャズのBGMが、非常に映像とよくマッチしていて、うるささを感じさせません。ジャズに造詣の深い和田さんならではでしょうか?
きらびやかなネオン輝く夜の街を駆け抜ける守山とリンダ。逃走劇の途中で、岸部さん、國村さんの正体が判明する瞬間、一瞬だけミュートするBGMにハッとさせられる。うまい! カッコいい!
出演者、エキストラ含め、子どもと呼べる年齢層が画面に一切出てこないのが、大人の雰囲気出すのに役立ってると思います。20年前でも、深夜の街を徘徊する中高生とか、幼子を連れまわす若い夫婦とかいそうなモンですが、あえて、出さないように気を配っていたとしか思えないほど、きれいさっぱり、大人しか出演しません。
全編を彩る豪華な出演者の皆さん。
- 追いかける男たち、南部(岸部一徳さん)と大場(國村隼さん)。
- リンダの店のオーナー、田崎(笹野高史さん)。
- 田崎の部下、戸塚(柄本明さん)。
- 故買屋の女主人(もたいまさこさん)。
- ライヴハウスのオーナー(斎藤晴彦さん)。
- ライヴハウスのカップル(大竹しのぶさん、高橋克実さん)
- 逃走中に逃げ込んだ花屋の売り子(佐藤仁美さん)。
- 逃走中に出遭ったスポーツカーのカップル(唐沢寿明さん、戸田菜穂さん)
- 逃走中に追いかけられたファンの女性(柴田理恵さん)。
- テレビを観ている男(三谷幸喜さん)。
- ホームレスの男(名古屋章さん)。
- リンダの店のステージに立つ奇術師(小松政夫さん)。
- 逃走中に荷台に逃げ込んだトラックの運転手(六平直政さん)。
- 逃走中に追いかけてきた巡査(田中要次さん)。
こんな面々が揃えば、遊び心満点の極上のエンタテインメントになるのは必至。
セリフの間合いの、実に心地よい歯切れの良さ。真田さんとミッシェル・リーさんの演技が素晴らしい。
テンポよく進むストーリー、スリリングな展開。追う者、追われる者、巻き込まれる者、過不足なく挿入される同時進行の場面のカット割の巧みさがキモチいい。
脚本もよく練られていて、次々と起こる出来事の因果関係が、ストンと腑に落ちる明快さ。もたいさん演じる故買屋が間違い電話するところなんか、実にあざとく素晴らしい伏線の仕込みですw
軽妙な中にも、大人ロマンティックな雰囲気とハードボイルドなアクション・パートを併せ持ち、実にワクワク、ドキドキ、楽しい映画になってます。
ストーリーの締めも潔く、実にスッキリとした落とし方に、ついつい拍手喝采。
カッコよすぎて、シビレましたw
実に。惜しい方を失いました。ご冥福をお祈りいたします。
そして、楽しいエンタテインメントを数多く世に発表してくださって、ありがとうございました。
※ボクの好きな和田誠監督の作品といえば
vgaia.hatenadiary.org