君も出世ができる
私的評価★★★★★★★★★☆
(1964日本)
ニッポン!ニッポン!ニッポンポン!
本場ブロードウェイやハリウッドのミュージカル全盛時代に対抗して製作された日本の本格ミュージカル超大作。同じ会社に勤めるハッスル型社員・フランキー堺と、ノンビリ型社員・高島忠夫の出世競争を歌と踊りでハッピーに綴る。丸の内のオフィス街で総勢400人が歌い踊りまくるシーンは圧巻の一語。本作で歌われる歌の作詞はすべて谷川俊太郎、作曲は黛敏郎が担当した。(日本映画専門チャンネルのあらすじから引用)
1964年、東京オリンピックの年。
高度経済成長に沸く日本の熱気が伝わる、シネ・ミュージカルの傑作ですねぇ。
ミュージカルって、あんまり見ないんですけど、この作品は楽しかったです。
楽しすぎて、最後の瞬間まで頬がゆるんだまま観終えてしまいました。
手足の短い小太りのフランキー堺さんのユーモラスなアクションが、今見てもおもしろいですね。
オープニング・クレジットのアニメーションもよく作りこんでるなぁ、と感心しました。
ミュージカル・パートの見どころを挙げます。
益田喜頓さん演じる社長の渡米を羽田空港のデッキで見送る社員一同の〝バンザイ屋の唄〟。空港の青空にこだまする〝ニッポン!ニッポン!ニッポンポン!〟のフレーズとダンス。今見てもポップでノリが良くて、楽しいです。
雪村いずみさん演じる社長の娘がオフィスの一同を巻き込む〝アメリカでは〟。すごい人数の社員が壮大なスケールで歌って踊りまくり、その間に日本的なオフィスがアメリカナイズされたオフィスに見る見る模様替えされていくさまが壮観です。
ガード下の飲み屋から次々とサラリーマンの酔客が道路にあふれ返って展開する〝サラリーマン出世三ヶ条〟。酔っ払いの動きが一瞬マイケル・ジャクソンの〝スリラー〟を彷彿とさせて、よくよく考えれば、こっちの方が古いんだよなぁ、と気づき苦笑します。しかし、百人は下らないすごい人数の酔っ払ったサラリーマンが、画面いっぱいに迫って来て、圧倒されます。
あと、画面を彩る美術さんのお仕事が素晴らしい。
ポストモダンというのか、社屋の造りや色彩が同時代のアメリカっぽくて、ステキです。
紅子(浜 美枝さん)の部屋もポップな色彩と調度品に囲まれていて、オシャレです。
紅子の勤めているシャレードの内装も、ゆったりとした空間に曲線を取り入れていて、居心地よさそうな空間を演出しています。
ガード下のスタンドバーの壁に描かれた、さまざまな人物画もおもしろいです。
とにかく、この時代の人が過ごす空間が、人間味にあふれていて、とてもステキなんです。
あぁ……この60年代半ばって、人の心が豊かな時代だったのかなぁと、しみじみ感じますねぇ。