一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

誘拐報道

私的評価★★★★★★★★☆☆

誘拐報道 [DVD]

 (1982日本)

 大阪府豊中市の私立の学校に通う小学1年生の男子が下校途中に誘拐され、医者である父親(岡本富士太さん)に対して、誘拐犯は3千万円の身代金を要求。警察はただちに厳重な捜査体制を敷くと同時に、報道各社には、子どもの生死が関わる重大事であるとして、事件を公表することはひとまず控えるよう、報道協定を要請する。事件の犯人は古屋数男(萩原健一さん)。多額の借金を抱えた彼は、切羽詰まって、自分の愛娘(高橋かおりさん)と同じクラスの男の子(和田求由さん)の誘拐を企てたのだった…。(WOWOWの番組内容から引用)


 1980年に起きた宝塚市学童誘拐事件を取材した読売新聞大阪本社社会部編の同名ルポルタージュを映画化、とのことです。
 誘拐事件を、加害者・被害者とそれぞれの家族、警察・新聞を主とした報道陣の姿を描いた、いわゆる社会派の映画、なんでしょうね。

 ストーリーは、たぶん、一番時間を割いてる加害者とその家族のことがメインなんでしょう。被害者側家族のことは、案外描かれ方が薄いです。もっと言えば、〝誘拐報道〟ってタイトルなのに、報道陣のことは、なんかしらゴチャゴチャしてるだけで、何をしてるのかよく分らないカンジでした。加害者の家に押しかけ、堅く閉じた家の奥で抱き合いながら身を震わせる妻と小学一年生の娘に向かって『被害者に謝罪しろ!』みたいな罵声を浴びせる正義感、まったくもってクソですね。警察なんか、加害者が最後に逮捕される過程を見れば、もっと間抜けな印象です。緊張から解放されて屁をこく刑事ってwwwいるのか?その描写^^;
 てな流れで、逮捕後の十数分は、蛇足感否めないカンジのストーリーでした。
 しかし、出演者の演技が素晴らしく、見どころがないとか、退屈だとかいうことは一切ありません。

 とにかく、加害者役の萩原健一さんの鬼気迫る演技が凄まじくキレてて、思惑どおりに運ばない事件の様相に次第に追いつめられていくさまが、画面からヒシヒシと伝わってきて、胸が痛みました。
 同時に、その妻役の小柳ルミ子さんの演技も素晴らしく、甲斐性なしの夫に振り回されてギリギリのところで踏みとどまろうとし、何とか家族を守ろうと底辺でもがく姿が、胸を打ちました。
 おまけに、子役時代の高橋かおりさん演じる娘がなんとも言えず健気で、じわっと泣けてきました。

 被害者の父役の岡本さん、何度も身代金の受け渡しに失敗して、次第にやつれて壊れていくさまが凄まじく、迫真の演技でした。
 ただ、その妻役の秋吉さんは……、追いつめられてヒステリックにわめくセリフとは裏腹に、表情が微妙で、なんだか顔だけ見てると他人事のように見えて、ちょっと困惑しました。前々から思ってましたが、不思議な役者さんです。


 警察・報道陣とも、共演者は名だたる俳優さんが、オールキャストみたいな勢いで名を連ねております。

 とにかく出演者多すぎて、どこで知った顔が出てくるか気づくのも楽しみの一つかも知れません。


●監督:監督: 伊藤俊也 ●脚本:松田寛夫 ●原作:読売新聞大阪本社社会部