一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

浅草の夜

私的評価★★★★★★★☆☆☆

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浅草の夜(日本映画専門チャンネル公式サイトより引用)

 (1954日本)

 浅草××座の踊り子高島節子(京マチ子さん)と、そこの作者山浦進(鶴田浩二さん)とは三年前からの恋人だったが、気性の強い節子は、彼と会えば必ず喧嘩になった。しかし、その場しのぎの脚本ばかり書かされてくさっている山浦を、何時かは必ず素晴らしい脚本の書ける人だと信じ、祈る優しい心根を節子は持っていた。節子の妹波江(若尾文子さん)はおでん屋の女中をしていたが、有名な都築柿江画伯(瀧沢修さん)の養子で、やはり日本画家の紫水(根上淳さん)と恋仲であった。ところが節子は身分違いだという理由で不思議な程強くこの二人の仲に反対し続けていた。波江の頼みで紫水に会った山浦は、どんな障害をのりこえても一緒になりたいという純粋で真剣な紫水の言葉に、是非とも二人の恋を成就させたいと協力を誓うのだった。 (日本映画専門チャンネルのあらすじから引用)


 BS日本映画専門チャンネルで鑑賞しました。
 これも未ソフト化ですね。
 モノクロームの作品で、現存する原版の最も状態の良いものをテレシネしたということで、場面の切り替わりのときにブチッという耳障りなポップノイズがけっこう盛大に混じりますが、それを差し引いても、概ね良好な画質・音質でした。

 この映画の時代、浅草生まれは、貧しかったのでしょうか。
 冒頭、隅田川に浮かぶ艀のような小船で生まれ、両親が既に他界してお爺とともに船で暮らす少年が登場します。画面に出てくる船の中の様子は、いかにも貧しい暮らしぶりです。
 有名画家の養子で日本画家の紫水と、おでん屋で女中をする波江との恋を〝身分違い〟という言葉で、波江の姉の節子が激しく反対します。〝身分違い〟です。なんとも切ない言葉・理由です。
 そんな時代なのですね。

 さて、浅草のレビューショーで、京マチ子さんが、肌の露出の多い衣装で、素晴らしいスタイルと美脚を披露してダンスを踊ります。ボクの知ってる京マチ子さんは、概ねこの映画より20年くらいあとくらいで、主に和服姿でしかお目にかかっていなかったので、なかなか衝撃的でした。
 さらに、妹役の若尾文子さんが、めちゃくちゃ若くて可愛らしくて、なんだか見ているだけで胸をときめかせてくれます。
 相手役の根上淳さんも、若々しい。ボクの中では、帰ってきたウルトラマンの伊吹隊長役がイチバン印象深いんですが、本作では、ちょっと頼り甲斐のない優男ってカンジで新鮮でした。
 で、主演の鶴田浩二さん、カッコいいですね。なんか、周りで問題が起きるたびに〝全部任せとけ〟みたいな意気込みでキリキリ舞いしてる、ちょっと血の気の多い好漢を演じてらっしゃいます。

 紫水との付き合いをめぐってヒステリックに声を荒らげて反対を唱える節子と、頑なに抵抗の姿勢を見せる波江のマジの言い合いは、なかなかの見ものです。
 節子のヒステリーに毎度付き合わされる山浦が、節子をなだめるはずが同じくらい血の気が多くて、毎度毎度ケンカ別れみたいになるのに、次の日には互いに何事もなかったかのように振舞うというのも凄まじいwwwホント、寅さんじゃないけど、『それを言っちゃあ、おしまいよ』ってくらい激しく罵り合って、ケロッとしてる、でもすぐにまた着火して激しく罵り合う。なのに……絶妙の腐れ縁ですなぁ^^;

 意外と最後はハラハラさせられる展開で、一気に破滅的な終劇を迎えるんじゃないかと胃がキリキリ痛みましたが、それもこれも、鶴田さんと京さんの鬼気迫る演技の賜物かと。最後は素晴らしいカタルシスを味わって、大団円を迎えられ、ほぉーっと安堵の息を吐きながら、満足感に浸りました。人情味あふれる、佳作だと思います。


※こちらも未ソフト化の鶴田浩二さんの映画。『日本映画・邦画を見るなら日本映画専門チャンネル』、素晴らしい。
vgaia.hatenadiary.org
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●監督・脚本:島 耕二