一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

大いなる驀進

私的評価★★★★★★★★★☆

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大いなる驀進(日本映画専門チャンネル公式サイトより引用)
大いなる驀進 [DVD]

 (1960日本)

 「大いなる旅路」で圧倒的な演技と貫録を魅せた三國連太郎が、特急さくら号の事務車掌・松崎に扮して再び好演!

 東京発長崎行きの列車に、様々な事情で乗り合わせた人々の人間模様を綴る大作。国鉄全面協力を得た貴重な場面を盛り込む臨場感とともに、新藤兼人の脚本によるスリリングな群像劇が展開する。松崎(三國連太郎さん)が車掌を務める特急さくら号で給仕係として働く矢島(中村賀津雄/現・中村嘉葎雄さん)は、発車間際に密かに同乗した恋人・君枝(佐久間良子さん)の反対をよそに退職を考えていたが、相次ぐ列車内のトラブルや土砂崩れなどに同僚や乗客と対処する中、仕事への誇りを取り戻していく。
日本映画専門チャンネルのあらすじから引用)


 『大いなる旅路』と同じ年の映画で、同じ東映、同じ監督・脚本家でタイトルに類似性があって、ともに国鉄の協力という映画なのに、特にシリーズ作というワケではない模様。さらに『大いなる旅路』はモノクロ映画、こちらはカラー映画、ちょうどモノクロからカラーへの過渡期の撮影だったのでしょうかねぇ。面白いですねぇ。

 中村賀津雄さんと佐久間良子さんを主演に据えていますが、三國連太郎さんをはじめとした特急さくら号に乗り合わせた乗務員・乗客たちの群像劇ですね。

 特急さくら号に乗る、さまざまな人生。
 故郷・長崎に錦を飾る代議士と、お国訛りの抜けない秘書の御一行様。
 周囲の盛大な祝福に見送られ、新婚旅行に向かうカップル。
 事業に失敗して傷心の旅に出る経営者。
 危篤の母を思い、一刻も早く故郷に帰りたいと、気が急く少女。
 父の会社から大金をせしめて、気弱な従業員の男と駆け落ちした奔放なお嬢様。
 長崎で待つ患者の命を救うため大阪から血清を運ぶ大学病院の看護師。
 名人級のスリ、抗争の真っ只中で命を狙われるやくざ者……。
 そんな中、夜の東海道山陽本線を西へ驀進する寝台特急さくら号の行く手には、台風が迫っていた……。

 特に、三國さんの存在感が、圧倒的です。
 大きな体をテキパキと動かし、立て続けに起きるさまざまな乗客の要望や車内外で起こる事件、事故に迅速かつ丁寧に対応し、乗客や乗務員たちに安心感を与えてくれる大きな存在になっています。

 ストーリー的には、台風の影響で土砂崩れが発生し、線路がふさがれた深夜の事故がクライマックスでしょうか。
 災害現場を見るにつけ、強風と激しい雨の中で、よく復旧作業ができたもんだと思います。
 冷静に考えると、ある意味、ファンタジーのようでもある展開なんですが、不思議と映画の世界にのめり込んでしまい、なんだか列車が運行を再開したときには、自然と涙ぐんでしまいました。
 現在東海道山陽本線を運行している寝台特急サンライズ瀬戸/出雲号は、けっこう雨で遅延することがよくあると思うんですが、それより長い距離を走る上、鉄道事情もよくない1960年ごろに、最終的に30分の遅延に収まったのは、やはりファンタジーだとは思いましたね^^;


 鉄道ファンならずとも、当時の鉄道風景が、非常に興味深いですね。

 特急さくらは、3段式2等寝台車(現在のB寝台車)、2段式1等寝台車(同A寝台車)、座席車を連結したブルートレインのはしりで、本作は国鉄の協力により実物の20系の寝台特急で撮影されているそうです。

 当時の時刻表によると東京駅16:35発、長崎駅12:25着ですから、19時間50分も列車の揺られるワケですね。座席車両で一夜を過ごすのは、しんどかったろうと思います。かくいうボクも1970年代の後半に、九州から座席車両の急行列車で一夜を明かした経験がありましたが、とても眠れる姿勢が作れるカンジではなく、結局一睡もせずに軽く酔ったようなボーっとした状態で、朝、列車を降りた記憶があります。

 現在は食堂車のある列車は極限られた特別な(高級なw)寝台特急だけですが、本作では当時の食堂車の様子も伺えます。準ヒロインで中村さんに思いを寄せるウェイトレス役を、中原ひとみさんが演じてらっしゃいます。本作のディナーは、ビフテキがお奨めだったようです。

 車掌も運行管理をする車掌と、客室の管理をする車掌と乗っていたそうで、三國さんの役どころが客室担当の専務車掌でした。

 今や乗務員も極力人員を減らして運行される列車ですが、客室の給仕(ボーイ)が複数名乗務して、担当車両の乗客をもてなしています。中村さんの役どころが、この給仕で、乗客からは『ボーイさん』と呼びかけられていました。三國さんの指揮下で、乗客の要望や客車内の変わった様子などを逐一報告するほか、寝台の上げ下げや、ドアの開閉なども受け持ちます。

 列車のドアは手動で、当時は駅のプラットフォームから、動き始めた客車に飛び乗る光景が当たり前だったようで、本作でもたびたびそのシーンが映し出されます。今はもう安全第一でドアの開閉が確認されないで列車が走り出さないようにしていますが、当時のこの大らかな情景は、なんともいえず列車旅の旅情をくすぐられますね。

 また、駅での停車時間もそこそこ長かったようで、長崎に凱旋する地元代議士が、停車駅ごとに大勢の支援者たちに歓迎される様子や、新婚カップルが、会社の同僚や支社の仲間たちに合唱で歓迎される様子などが映し出されています。

 岡山駅から西はまだ電化されていなかったため、牽引がEF58形電気機関車からC62形蒸気機関車に変わります。実は、よく見ていると、シーンごとに車両が変わっており、鉄道ファンの方なら、違いを楽しめることになりそうです(ちなみにボクは、全然分かりませんwww)


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●監督:関川秀雄 ●脚本:新藤兼人