記憶屋 あなたを忘れない
私的評価★★★★★☆☆☆☆☆
(2020日本)
記憶を消してでも守りたい愛がある
人の記憶を消せる“記憶屋”っていう人がいるらしい―。
大学生の遼一(山田涼介さん/Hey! Say! JUMP)は、恋人・杏子(蓮佛美沙子さん)にプロポーズをOKしてもらい幸せの絶頂にいたが、その翌日から杏子と連絡が取れなくなってしまう。
数日後、偶然に駅で杏子を見かけた遼一は声をかけるが、杏子は遼一のことを一切憶えていなかった。
実は遼一は過去に同じ経験をしたことがある。
幼少期に幼馴染の真希(芳根京子さん)が自分の目の前で一部の記憶を失ったのである。
遼一は都市伝説的な“記憶屋”のことを知り、真希と弁護士の高原(佐々木蔵之介さん)とともに、杏子が記憶を失った原因を探すことに。
高原は記憶屋の存在に半信半疑ではあったが、一人娘のためにある記憶を消したいと焦っていた。
高原の人生は残りわずかだったのである。
記憶屋の正体に近づくにつれ、遼一は多くの人が記憶屋に人生を救われていることを知る。
だとしたらなぜ杏子の中から遼一の記憶だけが消えたのか。
彼らがたどり着いたその先には、運命を大きく変える真実があった―。
(映画『記憶屋 あなたを忘れない』公式サイト「ストーリー」より引用)
なんだかさ、い~っぱいTVスポット打ってるし、どんなんかなぁと思ってたんだけど、根本的に〝記憶屋〟という設定が受け付けられんかったわ。
あのね。
出演されてる皆さん、うまいと思うし、迫真の演技ですばらしかったと思うんですよ。山田さんも、芳根さんも、すごい良かったと思うんです。
シナリオ的にも、じっくり練られてると思うし、ちゃんと感情の動きを納得させてくれる、自然な間合いで演出もされてたと思うんです。
なのに、どこに向かってるのか分かりづらいストーリーなのは、何なんじゃろなぁ。
ホラーっぽいのか、サスペンスっぽいのか、ヒューマンドラマっぽいのか、なんかその辺じゃろうけど、方向性が読めずにモヤッとしたまま観進めることに、多少なりともストレスを覚えました。
〝記憶屋〟という都市伝説が、実は…というのが、どうもストーリーの中にしっくり来てない気がしたのですよ。
何なら、最初のチャットで〝記憶屋〟自身が自分の存在がどういうものなのかについて、もうちょっとネタばらしを、シレッと挟み込んでおいても良かったんじゃないかと思ったりしました。
ストーリーが進んでいっても〝都市伝説〟っぽさが、さほど広がっていくわけでもないし、それなのに、なぜか高原も遼一も真剣に〝記憶屋〟の存在を信じて調査していることに、違和感を覚えて仕方なかったのですね。
で、半分くらい観たら、だいたいネタが分かってもうて、あぁ、それならアンバランス劇場っぽい、若干ホラーテイスト入った演出の方が、分かりやすかったし、感情移入できたかも、なんて思ったり。
この映画の設定だと、理不尽だとか、不条理だとか、そういうセリフは、理屈では分かっても心にスッと入ってこないんですよねぇ。
『人が死にたくなるほど辛い思いや悲しい目に遭ったとき、その記憶から開放することで、その人を助ける』という〝記憶屋〟の万能感たっぷりの設定は、よほどしっかり抑圧的に制御しないと、御都合主義的に設定をいじくれてしまうおそれが否めません。
たぶん、遼一は〝記憶屋〟が背負った業については理解しないままだっただろうし、最後はよく分からないままに、その場の雰囲気・感情に流された気がしますね。
そもそも、『なんで〝記憶屋〟にならんとイケんかったんなら?』と思うし、〝記憶屋〟になることを唆した人物も、『ちょっとそら無かろうが、ぶち無責任ぞ!』と思うワケで、不思議なほど、どんどん興醒めしていくばかりだったのです。
そして、エンディングは…予想どおりの哀しい終わり。
やっぱり、〝忘れさせたらイケん記憶〟は、手をつけたらイケん。
それじゃあ、救いがないがな。
それしてもうたら、やっぱり〝記憶屋〟のエゴじゃろが。
この作品で、一番困ったのが、遼一のキモチです。
ボクが同じ立場だったら、どう感じるんだろうか?
そうか、高原の手紙を読んだ遼一は、何かしら理解した上で〝記憶屋〟を許すことができたということなのか。
もしかしたら、ボクがダメなのは、こういったあたりの機微が分からん頓珍漢なところなのかもな。
たぶん、ボクの見方が素直でないというか、高原が手紙に書いたように『許す』ことが、ヒネクレ者のボクにはできないんだろうな、などとも思います。
なので、素直に物事を捉えることができる方からすれば、もっと良い評価が出ることでしょう。
もしかしたら、時間を置いて観直すと、新たに感情を揺り動かされることがあるかもしれません。
しかし、本日観た印象は、どうもイマイチ消化不良気味でした。
昨年2月17日に90歳でお亡くなりになられた、佐々木すみ江さんが出演なさっていて、あっと驚きました。まだまだお元気そうに演じてらっしゃったので、いつ撮影されたものなのか気になりましたが、久々にお目にかかれて、何だかすでに懐かしく思えてしまい、胸がアツくなりました。謹んでご冥福をお祈りいたします。