転がるビー玉
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2020日本)
再開発が進む、渋谷。
その片隅にある古い家の床は少し傾いている。
ここで共同生活する愛(吉川 愛さん)、瑞穂(萩原みのりさん)、恵梨香(今泉佑唯さん)の三人は夢を追い求めながら、
悩み、もがき、飲んで、愚痴って、笑っては、泣いた。
彼女たちが手にいれたのは、〈宝石〉なんて眩しいものではなくて、どこかで紛れ込んだ一つの欠けた〈ビー玉〉だった。
そんなある日、部屋の立ち退き勧告の通達が来る。街の再開発で家の取壊しが決定したのだ。
これは、いずれ出て行かなくてはならないその部屋で三人が過ごした、ささやかな日常の物語。
絶え間なく変化するこの街で埋もれてしまいがちな幸せは確かにそこにあった。
(映画『転がるビー玉』公式サイト「STORY」より引用)
ガールズのお話が分かるくらいなら、もっと楽しい人生送ってる気がする^^;
いや、気のせいだな。
でも、男性だけで、このシナリオ書いてたら、ビックリする。
一応、女性と共同脚本なんね。
愛がオーディションで二十歳って自己紹介するので、たぶんその辺りの年ごろの子たちなんだろう。
食事担当の恵梨香の朝夕ごはんを一緒に食べる以外は、自分たちのやりたいことに時間を使ってる。
特別ベタベタしない、互いのことは気にはかけるけど過干渉はしない、絶妙の距離感なのが、妙にリアルな感じに思える(知らんけど^^;)。
何者にもなれないジレンマに毎日もがき、苦しんでいても、三人で過ごした渋谷の夏は、ささやかだけど、確かに幸せな日々だった。
でも、たぶん。
そんなノスタルジックな感傷に耽るだけの映画じゃない――。
若いうちに罹る流行り病のひとつ〝東京に行けば、自分も何者かになれるに違いないって妄信しちゃう病〟って、勝手にあると思ってる^^;
愛のバイト先のカラオケボックスの女子店員で、鹿児島出身の子が『私、東京にいるってだけで、満足しちゃってる』って言うんだけど、東京に対する漠然とした憧れみたいな感情を、なんだか端的に言い表してる気がした。
愛が『憧れだけでモデルやってる』って言い切られて、ズタボロに打ちひしがれたところ。
たぶん、彼女がオーディションに落ち続ける理由も、そんな気構えにあるって、自分でも気づいていたからなんだろう。
憧れのファッションの仕事に就いているけれど、スケジューリングされたことを、ちゃんとこなせていない瑞穂は、いつも職場の先輩や同僚たちに叱られている。
雰囲気に流されやすく、別の女と同棲しているような男に振り向いてほしくて、毎日酒を浴びるように飲んでないと、平静を保てないように見える。
恵梨香は毎日のように、路上に立ち、自分の作った歌を弾きがたりしている。
疲れた顔のサラリーマンが立ち止まって聴くほかは、ほぼ誰も耳を傾けてくれない。
高校時代の同級生に、恵梨香と一緒に音楽をやってたメンバーたちが、フェスに出ると聞かされ、落ち込む。
三人の女の子たちが持っていたのは、一部が欠けた〈ビー玉〉だった。
不完全だけど、キラキラ輝いて見えた。
不完全だけど、だからこそ、欠けた〈ビー玉〉は愛おしくてたまらない。
しかし、彼女たちを取り巻く現実は、決して甘くはない。
渋谷の再開発に掛けて、彼女たちが居場所を退場することを迫ってくる。
欠けた〈ビー玉〉を置いて、新規巻き直しを図るのか、それとも、欠けた〈ビー玉〉を握りしめたまま、打ち破れない殻に閉ざされ続けるのか?
恵梨香が路上ライブをしているのを見て、声をかけてきた青年との会話。
『毎日同じだと思ってたけど、行き交う人は違うし、街も変わって行ってた。私だけが、同じまま置いてかれてた』
きっと、欠けた〈ビー玉〉は、転がり始める。
新たな希望を探して。
ボクの大好きな徳永えりさんを、あんな短いシーンで使い切るなんて……贅沢過ぎる^^;
●監督:宇賀那健一 ●脚本:宇賀那健一、加藤法子