一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

白昼堂々

私的評価★★★★★★★★★☆

あの頃映画 「白昼堂々」 [DVD]

 (1968日本)

役者も揃った! 配置も決まった!
ソレ行け、万引き集団!

 会社が倒産し、途方にくれた渡辺勝次(渥美清さん)はかつての仲間を呼び集めた。勝次は昔スリ名人として名を轟かせた男だ。続々と勝次の元に集まるスリ仲間たち。スリ集団の結成だ。上京した一団はデパートに狙いをつけ、大仕掛けな万引きを繰り返す。が、一人、二人と警察に捕まり始めた。勝次は一か八かの大勝負に出る。それはデパートの莫大な売上金を奪うという、とてつもない大計画だった…。
(DVDパッケージより引用)



 九州の炭鉱の閉鎖で切羽詰った人々が、かつてスリの名人として名をはせた〝ワタカツ〟こと渡辺勝次の指導の下、泥棒家業に鞍替えし、都会のデパートで集団万引きを繰り返すという、結城昌治さんのピカレスク・ロマンを原作とした痛快人情喜劇。

 『男はつらいよ』シリーズで兄妹役だった渥美清さんと倍賞千恵子さんが〝契約万引き仲間〟から〝契約夫婦〟となるため、丁々発止の大ゲンカを見せるくだりにハラハラしちゃいましたね^^;

 スリから足を洗い、年頃の娘と妻との倹しい暮らしを大事にしながらデパートの防犯係を務める銀三が、かつて交流のあったスリ名人ワタカツの仲間(生田悦子さん)がスリをしくじった現場に居合わせたことから、勝次と銀三の交流が再開します。

 そこで炭鉱の人々の窮状を知った銀三が、勝次の悪巧みを見て見ぬフリヲをする羽目になってしまうのですが、人が好くてバタバタ慌ててしまったり、高校生の娘のことをを思って哀愁を漂わせてしまったり……ユーモラスでありながら、ペーソスを感じさせる藤岡さんの演技が、とてもすばらしかったです。

 ストーリーはテンポが良くて、刑事役の有島一郎さんをはじめとした演技の上手い役者さんたちの、キャラの立った役どころも面白くて、あっという間に観終えてしまいました。
 とにかく気づいたら、観ているボク自身も万引き集団の仲間の一人になった気分になってて、悪巧みの成り行きを手に汗しながら見守っていましたね。

 一方で、時代的にはエネルギー革命と呼ばれる石炭から石油への資源の切り替え時期であり、閉山した炭鉱の人々の閉塞感あふれるあばら屋と、都会の華やかなデパートの買い物客の様子の対比が、くっきりと社会の格差を見せつけていて、決して笑ってばかりもいられない時代だったんだな、と思いました。

 しかし、最後に刑務所でタバコを吸いながら明るく笑い飛ばす勝次と銀三の姿に、何があっても逞しく生き抜く人々の強さを感じ、胸が空く思いをした次第です。

 面白かったです。



●監督:野村芳太郎 ●脚本:野村芳太郎、吉田 剛 ●原作:結城昌治(小説『白昼堂々』/角川文庫刊)