一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

うん、何?

私的評価★★★★★★★★★★

うん、何? [DVD]

 (2008日本)

島根の美しい風土に溶け込む爽やかな青春
人間愛、郷土愛、そして映像美が心に残る感動作!

 島根県雲南市。川沿いの桜並木が朝陽に染まるころ、この町の新しい一日がはじまる。主人公の須賀鉄郎(橋爪遼さん)は雲南高校3年生。神話の社を中心に見事な棚田が広がり、古き良き日本の風習が残る高台の農家に住んでいる。毎日の日課は、父(菅田俊さん)の工場で作られる新鮮な牛乳を、入院中の母(宮崎美子さん)に届けること。そして目下の悩みは、卒業後の進路と幼馴染で同級生の多賀子(柳沢ななさん)へのやるせない想いだった…。
(DVDパッケージより引用)



 『うん、何?』て…ダジャレかよ^^;

 島根県雲南市を舞台にした錦織良成監督の島根三部作の二作目。
 第一作の『白い船』は、漁師町の小学校の児童が主人公だったが、本作は棚田が広がる神話のふるさとのような田舎町の高校生が主人公の青春ドラマ。

 全編を彩る奥出雲地方の美しい自然と、神話の世界に近い人々の端正な暮らしぶりがステキだ。
 そして、木々をゆする風の音、ゆったりと流れる川の穏やかなせせらぎの音、森に響き渡る野鳥の声、夏の陽射しとともに降り注ぐセミの声、夜の草むらに奏でられる虫の声、自然の中に溶け込むさまざまな〝音〟が印象的だ。

 見ていて、自然に涙がほろほろ零れ落ちるような、そんな美しい映画。



 高校生最後の夏休みを前に、郷土愛あふれる熱血教師・尾崎(甲本雅裕さん)が、鉄郎たちクラス全員を、特別授業として地元の史跡や名勝に引っ張り出す。
 期末試験が終わったばかりで受験を控えた大事な時期に、学校の授業とは関係ない特別授業の内容に、当然、クラスからは疑問の声が噴出するが、尾崎は、地元のことを何も知らずにふるさとを出ていく教え子たちに、学校で学べることの何万倍も楽しいことが世の中にあること、ふるさとの本当の良さを知っておいて欲しいことを熱弁する。

 錦織監督の島根県作品群に共通する〝ふるさと愛〟の深さ、日本人の原風景を守りたいという熱い思いを感じる。


 残される家族に愛情深く思いを託しながら亡くなる命、大勢の家族に祝福されながら新たに生まれる命、神話の時代から続く大きな時の流れの中で綿々と続く人々の営み、その営みの中の一コマとして描かれる鉄郎たちの青春、何もかも愛おしくて、美しい。

 ここで生まれ、ここで生きる。

 温かな気持ちが胸にあふれてくる映画だ。




 どうでもイイ話を少々。

 カナヅチの鉄郎は、都合3回も水に落ちる。
 どの角度からでも、ケレン味無く、見事な落ちっぷりで感心した^^;
 橋爪遼さんは、名優・橋爪功さんの息子さんだが、今は活動してないんだよなぁ。
 もったいない。

 あと、鉄郎の父の勤める〝雲南乳業〟は、牛乳パックのデザインからして地元の〝木次乳業〟だな。
 たまにパスチャライズ牛乳飲むことあるけど、割とあっさりと飲める。
 ちなみに木次の読み方は〝きすき〟である。


※錦織監督の島根三部作の第一作目。
vgaia.hatenadiary.org
※同じく島根県を舞台にした映画。
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※橋爪遼さんの出演作。
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●原案・脚本・監督:錦織良成 ●音楽:浜田真理子