一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

マリと子犬の物語

私的評価★★★★★★★★★☆

マリと子犬の物語 スタンダード・エディション [DVD]

 (2007日本)

これは、実話から生まれた、いのちの物語。
誰もいない村で生き抜いた、犬の親子の奇跡の16日間。

 新潟県山古志村は、自然に恵まれた美しい村。そこで暮らす石川家は、村役場に勤める優一(船越英一郎さん)、息子の亮太(広田亮平さん)と妹の彩(佐々木麻緒さん)、そして祖父・優造(宇津井健さん)の4人家族。亮太と彩は早くに母親を亡くしていたが、母の妹の冴子(松本明子さん)が時々やって来て、母親代わりに世話をしてくれていた。そんな石川家に、新しい”マリ”という子犬が、家族の仲間入りをする。それから数年後、マリは成長し、3匹の子犬を産む。新しい家族の誕生に石川家は大喜び。しかし幸せな時はつかの間だった——。大地震が発生! 山々は崩れ、地面は裂け、家々が崩れ落ちる。人々やマリたちにも危険がふりかかる!
(DVDパッケージより引用)



 いろんなことが過ぎって、ついつい……長くて、ゴメン。



 2004年(平成16年)の正月、犬を飼い始めた。


 実は前年の夏以降、体調を崩していたボクは、その年の10月半ばごろから翌年の2月いっぱいまで、4ヶ月ばかり休業していた。

 2004年は、定期的に通院して専門医の指示を仰ぎつつ、半ばリハビリしながら仕事に復帰した年だった。

 そのころ、リタイアして時間を持て余していた父が、姪から引き取った(押し付けられた?www)ハムスターを事故死させてしょんぼりしていたので、在宅療養中だったボクは、土曜日の午後にけっこう大き目のペットショップに父を連れ出したのだった。

 そこで、ハムスターをまた飼おうかどうしようか、小動物コーナーでさんざん迷ったあげく、何も買わずに店を出ようとしたところ、レジ奥の多目的スペースで犬猫の譲渡会をやっているのが見えて、あまりその気もなくぶらぶらと冷やかしていたら、山で保護された生後3ヶ月の4兄妹の激カワの子犬たちが目に入り、うかつにもその中の一匹にボクが一目ぼれしてしまって、飼うことになった次第。

 猫を飼うことは、高校時代が最後だが、子どものころから度々経験していたので、自分は猫派だと思っていた。

 一方、犬を本格的に飼うのは、中学以来2度目だった。というか、たぶん、本気でボクが責任を持って犬を飼おうとしたのは、初めてだった。

 猫の方が良かったけどなぁ、なんてボンヤリ思うこともあったが、父は生活に張り合いが出来たと見えて、毎日ごきげんで朝昼晩と一日3回、散歩に連れ出していたので、まぁ、結果的に猫を飼うよりは良かったということなのだろう。


 その2004年、ボクの住む町は8月末から10月半ばにかけて、立て続けに襲ってきた3つの台風の影響で、高潮による沿岸部の浸水や海岸沿いの国道の崩落、ため池や河川の氾濫、土砂災害など、多大な被害を受けた。

 そしてその痛手を癒すまもなく、テレビニュースで知ったのが、10月23日午後5時56分に発生した〝新潟県中越地震〟だ。

 崩落した山に行く手を阻まれ、陸の孤島と化した山古志村を次々と襲う余震の惨状が、テレビで見ているだけでもつらくて、暗澹たる気持ちで毎日を送っていたと思う。

 まだ通院中だったボクは、何度か心がくじけそうになった。

 でも、そんな日々の暗い気持ちを癒してくれたのは、無垢な犬の存在だったなぁ。



 犬を飼い始めて丸々4年経った2008年(平成20年)の正月休みに、両親と一緒に3人で劇場(TOHOシネマズ)で観たのがこの映画である。

 今思えば、家族3人で劇場に行ったのは、これが最初で最後になってしまった。


 テレビで映画の情報を知り、うちの犬の名前がマリオで、ふだん両親がマリと略して呼ぶことから、これも何かのご縁と思って、急に思い立って観にいくことにしたのだった。

 そのときも、事前にタオルを3人分用意していて、思い切り泣かされたのを思い出す。


 12年ぶりに観たワケだけど、予想どおり、やっぱり子役の佐々木麻緒さんの泣きじゃくる演技に持ってかれた。

 この子の〝泣き〟と〝叫び〟には、ほとほと弱ってしまう。

 どうしようもなく、感情を揺すぶられてしまう。


 そして、トレーニングされたマリ役の犬・イチの健気な演技に持ってかれた。

 なんでそんな風に動けちゃうの?

 人の気持ちに寄り添って演技できるの?

 犬を飼うと分かる。

 犬は、大切な家族の感情に寄り添うことのできる生き物だと。


 ホント、どちらも、ずるいほど泣かせてくれるので、困ってしまう^^;



 それから、立て続けに襲いかかる余震で崩壊する石川家の家屋の描写をはじめ、激しく揺れる画面と音に、心の底から〝絶望的な恐さ〟と〝言い知れぬ不安〟を覚えたよ。

 災害を直接・間接に数多く経験してしまった今の方が、12年前より一層感じたね。




 亮太と彩のじいちゃんを宇津井健さん(2014年3月、82歳没)が、亮太の小学校の担任の先生を小林麻央さん(2017年6月、34歳没)が、亮太の同級生の女の子のお母さんを角替和枝さん(2018年10月、64歳没)が、それぞれ演じてらっしゃいます。

 みなさん好きな俳優さんでした。

 謹んで、ご冥福をお祈りいたします。


 モデルとなった実在のマリも、2016年6月に15歳で亡くなりました。

 うちのマリオも、2019年4月に14歳で亡くなりました。

 そして父も、2017年6月に80歳で亡くなりました。

 犬を飼うことを決めたとき、内心、父と犬と、どっちが先に亡くなるのかなぁ、犬が先に逝ったら、父も心折れるよなぁ、なんてことを考えてましたが、父の方が先に逝きました。

 父は、大切なものを失わずに往生できたのかなぁ?


 『もう、死んじゃうのヤダよぉ!』

 彩が泣きじゃくるように叫ぶけど、死はあまねく平等に命あるものに訪れます。

 どんなに大切で愛おしく思っていても、事件や事故であっ気なく死んでしまうこともあれば、十分に余生を楽しく過ごした末に、眠ったまま大往生することもあります。

 いずれにしても、神様に生かしてもらえるうちは、一所懸命に生きなくちゃな。


 マリと三匹の子犬のサバイブに、山古志村のみなさんは、勇気付けられたでしょうか?

 ボクは、犬とのシアワセな14年間の生活に、生きる勇気と立ち直る元気をもらったと思っています。





 あだしごとですが、佐々木麻緒さんは、ウルトラマンマックスの神回である第15話『第三番惑星の奇跡』(2005年、中部日本放送三池崇史監督)でも、天才的に泣かせる演技を披露しています。



●監督:猪股隆一 ●脚本:山田耕大、清本由紀、高橋亜子 ●音楽:久石 譲 ●原作:桑原眞二、大野一興(絵本『山古志村のマリと三匹の子犬』/文藝春秋刊)