一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

宇宙でいちばんあかるい屋根

私的評価★★★★★★★★★★

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映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公式サイトより引用

 (2020日本)

時間は気持ちよく使わなきゃ

 お隣の大学生・亨(伊藤健太郎さん)に恋する14歳の少女・つばめ(清原果耶さん)。優しく支えてくれる父(吉岡秀隆さん)と、明るく包み込んでくれる育ての母(坂井真紀さん)。もうすぐ2人の間に赤ちゃんが生まれるのだ。幸せそうな両親の姿はつばめの心をチクチクと刺していた。しかも、学校は元カレの笹川(醍醐虎汰朗さん)との悪い噂でもちきりで、なんだか居心地が悪い。つばめは書道教室の屋上でひとり過ごす時間が好きだった。ところがある夜、唯一の憩いの場に闖入者が――。空を見上げたつばめの目に飛び込んできたのは、星空を舞う老婆の姿!? 派手な装いの老婆・星ばあ(桃井かおりさん)はキックボードを乗り回しながら、「年くったらなんだってできるようになるんだ――」とはしゃいでいる。最初は自由気ままな星ばあが苦手だったのに、つばめはいつしか悩みを打ち明けるようになっていた。
(映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』公式サイト「STORY」より引用)

uchu-ichi.jp



 沁みた……。





 14歳の少女の心の揺らぎをつぶさに描きながら、思春期真っただ中の彼女が少しずつ成長していくさまを丁寧に紡いだドラマ。

 ファンタジーだけど、ファンタジーっぽさを、ほぼ感じさせない、そういうところをあからさまにしない演出がイイ。


 画がきれい。
 大きな空の下に広がる甍の波(昭和だなぁw)が素敵。
 屋上の裸電球をぶら下げただけの照明が素敵。
 間接照明でほんのり温かく映し出される部屋のインテリアが素敵。
 水族館の水クラゲの水槽が上手に使われてた。めっちゃ、ファンタスティックな宇宙感出てて、良かった。


 ホオズキとか、小物の使い方も効いてる。
 最後にベランダに現れた小物の使い方は、ホント、泣けた。


 音が心地よい。
 郊外の住宅街にひそかに響き渡る自然の音が素敵。
 落ち着いた雰囲気の音楽が、画面にマッチしてて素敵。


 さまざまな場面に散りばめられた、人の優しさが、沁みた。
 心が震えすぎて、声を抑えても、流れる涙を止められなくなった。


 何より、主役の清原果耶さんが、最高に良かった。
 さまざまに揺れ動く14歳の多感な少女の醸す表情が、とってもナチュラルに感じられて、すごく画面の中に魅入られた。
 あと、エンディングの主題歌を歌う、清原さんの歌声が、すごく沁みた。
 薬師丸ひろ子さん以来の、主演女優さんの清らかな歌声で心を洗われるエンディングだった。


 桃井かおりさんも素敵な歳を重ねられてて、とっても良かった。


 監督の藤井道人さん、いい演出ですね。
 この作品の、ラストの締め方が、大好きです。
 こういう感性、いいな、と思います。



 絶対、繰り返し観たくなる作品。
 満天の星空で★満点でした。


●監督・脚本:藤井道人 ●音楽:大間々 昂 ●原作:野中ともそ(ファンタジー小説『宇宙でいちばんあかるい屋根』/光文社文庫刊) ●主題歌:清原果耶「今とあの頃の僕ら」(カラフルレコーズ/ビクター)