一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

みをつくし料理帖

私的評価★★★★★★★★★☆

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映画『みをつくし料理帖』公式サイトより引用

 (2020日本)

泣き味噌やなぁ、澪ちゃん。
狐はコンコン、涙はこん、こん。
怒られるんも、罰当たるんも一緒や。

 享和二年の大坂。8歳の澪と野江は、暮らし向きは違えどもまるで姉妹のように仲が良かった。ところが大坂の町を襲った大洪水で、二人の仲は無残にも引き裂かれてしまう。両親を失った澪は偶然通りかかった天満一兆庵の女将・芳(若村麻由美さん)に拾われるが、野江の消息はわからずじまい。それから10年の月日が経った。

 江戸・神田にある蕎麦処「つる家」で女料理人として働く澪(松本穂香さん)は悩んでいた。店に雇われて三カ月目にして、初めて振舞った深川牡蠣の鍋料理。大坂出身の澪にとっては上方ならではの極上の味のはず。しかし江戸では殻ごと七輪で焼くのが基本。客からは不評を買ってしまう。

 料理作りに試行錯誤する澪は、神田の町医者・永田源斉(小関裕太さん)から、江戸の料理の味が濃いのは大工などの職人が多いことが理由であることを聞き、「食は人の天なり」という言葉を知る。澪は気持ちを変えて江戸の味に合わせた料理を作り、常連客からは太鼓判を押されるが、どこか納得のいかない自分もいた。常連客で御膳奉行の小松原(窪塚洋介さん)はその心を見破り「料理の基本がなっていない」と一喝する。

 スランプに陥った澪を見かねた町医者の永田は、吉原で行われる祭りに澪を連れ出す。祭りの出し物では、吉原の遊女たちが白狐の仮面をかぶった舞を踊り、見物客たちを楽しませていた。そこで澪は、吉原が作り上げた幻の花魁とも呼ばれるあさひ太夫の存在を知る。

 吉原で食べた酢醤油の心太からヒントを得た澪は、「つる家」で江戸流と上方流を掛け合わせた心太を作り、店を繁盛させる。意外な形で店を切り盛りする澪の姿に手応えを得た店の主・種市(石坂浩二さん)は、澪に店を継いでほしいと打ち明ける。

 種市の気持ちに応えるべく、澪はいまだ“ご寮さん”と慕う芳の協力を得ながら、不眠不休で理想の出汁を生み出した。その出汁で作ったのが、今はなき天満一兆庵で評判だった品「とろとろ茶碗蒸し」。その美味さは江戸中を魅了し、店はいまだかつてない活気を見せる。

 そんな中、澪のもとを怪しげな影をまとった男が訪ねてくる。店の評判を聞きつけて「ある方の故郷をしのぶよすがに」と茶碗蒸しを求めてきた。そのある方とは、幻の花魁・あさひ太夫。男はあさひ太夫のいる遊郭・扇谷で料理番をしている又次(中村獅童さん)だった。

 又次から上方の思い出話を求められた澪は、幼なじみの野江との話を聞かせる。大坂の新町廓にある花の井に下駄を誤って落としてしまったこと。すかさず野江が自らの下駄を落として「怒られるんも、罰当たるんも一緒や」と言ってくれたことを。

 あさひ太夫のもとに茶碗蒸しを届けた又次は、土産話に澪から聞いた花の井の話をする。その話を聞いたあさひ太夫は言葉を失う。困っていた幼なじみを勇気づけるために花の井に下駄を落としたのは幼き頃の自分。あさひ太夫こそ、澪の生き別れた幼なじみの野江(奈緒)だった。

(映画『みをつくし料理帖』公式サイト「ストーリー」より引用)
www.miotsukushi-movie.jp


 泣いたわ~。
 NHK黒木華さんと成海璃子さんの澪と野江を時折見てたので、もう泣けるツボが分かりすぎてて、そういった場面が迫って来るだけで身震いしながら泣いてました^^;

 人の優しさに溢れる映画でしたね。
 その優しさを引き立てるために、主人公の澪と野江に降りかかる苦難の数々ですが、映画の枠では描き方があっさり気味かなぁ、とは思いました。特に登龍楼の手段を選ばない悪質な嫌がらせや、胸が悪くなるほどの悪行三昧はほぼ描かれず、登龍楼との料理対決も今回は無しと、ちょっと物足りなさを感じるところはありました。
 とは言え、観ている最中も、全編観終えた後までも、心がほっこり温かくなる、ステキな人情噺でした。


 日ごろ自信なさげに振る舞いながら、いざとなったら強気に啖呵を切って見せる澪ですが、松本穂香さんの演技、ちょっと啖呵のときに力が入りすぎてる気がして、強すぎるなぁと感じました。
 でも、全体的には、すごく澪のイメージにはまってたと思います。
 今回、彼女が主演と言うことで、楽しみにしてたので、良かったです。

 あと、窪塚洋介さん、和装が似合わない体格ですねぇ^^;
 詰め物で補正とかしてなかったんですかねぇ?
 中村獅童さんの着物姿が圧倒的だったんで、余計気になりました。


 そして、角川春樹さん、映画製作の集大成といった感じですねぇ。

 まずは、つる屋主人役の石坂浩二さん、さすがの貫禄でしたねぇ。
 角川春樹さんの映画事業のハシリは、角川文庫からの映画化ということで、金田一耕助シリーズのヒットにより、その後のヒット作連発に繋がっていったんですよねぇ。
 その金田一役が石坂さんで、たぶん、歴代金田一俳優の中でも、ピカイチのはまり役だったと思ってます。
 エンドクレジットによれば、特別出演ですから、ノーギャラでも角川春樹さんの最後の監督映画に花を添えたい、という意気を感じました。

 それから、角川映画と言えば、角川三人娘たち。
 薬師丸ひろ子さんと渡辺典子さんが出演なさってたんで、まさか原田知世さんまで……は、さすがに欲張りすぎでしたか。
 それでも、お二人がそれぞれ登場するシーンでは、若き日の彼女たちが出演した角川作品を思い起こし、なんとも感慨深いモノでした。


 最後に、手嶌葵さんが歌う主題歌「散りてなお」がたまらなく良かった。
 彼女の歌声、歌い方、大好き!
 ユーミンの曲なんですね。素晴らしい!



 ところで。
 めっちゃ気になったわ~、亀^^;

 引きの画面だけど、つる屋の母屋の縁側の軒先に、吊るし亀が2匹、手足をバタバタさせてるのが見えてるんだけど、何事も無いように、登場人物が話しこんでるって、なんかシュール^^;

 ググってみたら、お店が深川にある橋のたもとなので、歌川広重の浮世絵で描かれてる〝富士と吊るし亀〟をなぞったものだと思われるんだけど、〝亀は万年〟に洒落て〝深川萬年橋〟に亀が吊るされてる、って説明でOK?
 

●監督:角川春樹 ●脚本:江良 至、松井香奈 ●原作:髙田 郁(小説『みをつくし料理帖』/角川春樹事務所)