一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

スパイの妻

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

f:id:vgaia:20201029204750j:plain
映画『スパイの妻』公式Twitterより引用

 (2020日本)

 一九四〇年。少しずつ、戦争の足音が日本に近づいてきた頃。
 聡子(蒼井 優さん)は貿易会社を営む福原優作(高橋一生さん)とともに、神戸で瀟洒な洋館で暮らしていた。
 身の回りの世話をするのは駒子(恒松祐里さん)と執事の金村(みのすけさん)。
 愛する夫とともに生きる、何不自由ない満ち足りた生活。

 ある日、優作は物資を求めて満州渡航する。
 満州では野崎医師(笹野高史さん)から依頼された薬品も入手する予定だった。
 そのために赴いた先で偶然、衝撃的な国家機密を目にしてしまった優作と福原物産で働く優作の甥・竹下文雄(坂東龍汰さん)。
 二人は現地で得た証拠と共にその事実を世界に知らしめる準備を秘密裏に進めていた。

 一方で、何も知らない聡子は、幼馴染でもある神戸憲兵分隊本部の分隊長・津森泰治(東出昌大さん)に呼び出される。
 「優作さんが満州から連れ帰ってきた草壁弘子(玄理さん)という女性が先日亡くなりました。ご存知ですか?」

 今まで通りの穏やかで幸福な生活が崩れていく不安。
 存在すら知らない女をめぐって渦巻く嫉妬。
 優作が隠していることとは――?
 聡子はある決意を胸に、行動に出る……。

(映画『スパイの妻』公式サイト「ストーリー」より引用)
wos.bitters.co.jp


 NHKのBS8Kで放送したテレビ番組を劇場版として上映した作品だったんですね。
 第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞作品として話題に上ってたので、楽しみにしてたんですが、思ってた以上に〝メロドラマ〟でしたわ。

 夫役の高橋一生さんに抱きついて甘える姿を見て、『ロマンスドール』を思い出しましたが、こっちの妻は、可愛らしいだけじゃないんですよねぇ。
 太平洋戦争前、女性はいろんな意味で弱い時代。嫁ぐまでは家長である父に、嫁いでからも夫に守られて生きていくのが当たり前、夫にもしものことがあれば……先行きの不安が募るばかりの時代であったのでしょう。
 生きていく上で、ある意味、武器を持たない妻は、いざとなったら、どうするのでしょうか?

 そう思って観てたら、びっくりしたなぁ、もう。
 愛する夫だけを守るために、夫の甥を憲兵に売るとか、しかも、絶対夫を道連れにしない筈だと計算してたとか、肝の据わり方が尋常じゃないですよ^^;
 開戦前夜の時代に、いろんな意味で弱い立場の女性が、自分の幸せを守るためにできることを、精一杯絞り出した結論が、ソレ?
 怖いわぁ……。

 まぁ、でも。ストーリーはそこからですもんねぇ。

 国家の機密を持ち出す売国奴=連合国のスパイの嫌疑をかけられた夫と、「あなたがスパイなら、私はスパイの妻になるだけです」と腹を括る妻が、憲兵の目を盗んで亡命を果たし、アメリカへ渡れるのか、どうなのか……。
 夫が主役なら、『陸軍中野学校 竜三号指令』みたいな、壮絶な脱出劇を描く戦争アクション映画になっちゃうんでしょうが、主役はあくまで〝妻〟の方。
 アクションよりロマンスに傾くのは必然なのか、どうなのか知りませんが、戦時下の異常時に、妻の一途な思いは果たして実るのか……。


 なんかね。最後、暗転して白抜きの文字だけでその後のことを語って終わられるの、苦手だな。
 文字だと、たとえ臭わすような表現でごまかしても、そうとしか受け取れないじゃん。
 むしろ、何もないまま、戦時という異常な状況下で、痛み苦しんだ人々の思いに寄り添うようなカタチの余韻だけを残して、あとは観た人の想像で終わらせたら良かったんじゃないかなぁ。


 でもまぁ……確かに、BSでNHKがやったドラマと言われれば、そんなイメージの作品だったかなぁ。
 嫌いじゃないけど、さほど繰り返し観たくなる感じでもない、そんなところです。


 外国の方々は、この映画のどういったところを評価して監督賞を決めたのか気になったけど、わざわざ調べるのも面倒だし無粋な気がするので、自然と目に入るまで、知らずにおこうかと思います。




 そして、ごめんなさい。
 ボクも〝見てない〟ので、戦争の理不尽さを訴えるのに及び腰です。
 自分のシアワセしか考えてなくて、申し訳ないけど、逆にそういう時代に生まれ育ったことには感謝して、今の時代の理不尽さには、ちゃんと向き合わないといけないのでしょうね。
 でも、コスモポリタンな夫・優作のようには、なれないかな。



黒沢清監督作品で観たことあるの、コレだけだった。
vgaia.hatenadiary.org
高橋一生さんと蒼井優さんは、この作品でも夫婦役でした。
vgaia.hatenadiary.org
恒松祐里さんの顔に見覚えがあったんだけど、思い出せなかった。ナズナちゃん、5年前かぁ……^^;
vgaia.hatenadiary.org
※同じ時代の神戸を舞台にした和製スパイ映画
vgaia.hatenadiary.org

●監督・脚本:黒沢 清 ●脚本:濱口竜介、野原 位