一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

感謝離 ずっと一緒に

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

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映画『感謝離 ずっと一緒に』公式サイトより引用

 (2020日本)

笠井謙三(尾藤イサオさん)と、妻の和子(中尾ミエさん)。

 銀行マンで転勤族の夫と共に、長いこと仮住まい生活をしてきた。定年を迎え、夫婦だけになったふたりのおうちで、しあわせな日々を送っていたある日、妻が倒れた。。。
 いつだって妻の明るさに助けられてきた。妻の願いは僕が叶える。妻とのかけがえのない時間を思い出し、感謝を込めて、愛する人の遺品を手放していく。

(映画『感謝離 ずっと一緒に』公式サイト「STORY」より引用)
kanshari-movie.com


 エッセイを原作とした実話ベースのお話。

 長年連れ添った仲良し夫婦に、不意討ちのように訪れた妻の脳梗塞から介護、看取り、遺品整理。
 ひとつひとつの遺品にまつわる思い出と遺品に対する感謝の意。
 感動がないワケがないのですよ。
 今にも亡くなりそうな人の方から「ありがとう」って繰り返されたら、胸が張り裂けそうになって、もう、心がグズグズに崩壊するだけだよなぁ。

 実際、そこ、泣きましたよ。

 まぁ……泣きはしたんですが……。

 けっこう思い出が定年後の暮らしに偏っているとか、ホントはもっと二人の間に積もる思い出はいっぱいあったであろうに、なんか狭い世界しか描かれていないような印象で、そのせいか、全般的に単調なお話に感じられました。

 とにかく、朝6時の起床からドラマが始まったかと思おうと、その日のうちに脳梗塞発症。
 連日夫が見舞いに来て、退院と同時に介護付き有料老人ホームへの入所。
 リハビリの甲斐なく、妻は日に日に心も体も弱って、再入院。
 早朝、病院からの連絡で夫が病室に駆け付けるも、すでに妻は……。

 合間合間に散歩やドライブに出かけては思い出に浸る映像が挟まれますが、一度だけ妻が「お家に帰りたい」と駄々っ子のように感情を爆発させる以外は、性急で単調にドラマが運ばれてしまったような印象で、ちょっと残念でした。


 とは言え、父を看取ったときの思いが去来して胸が詰まったり、行く行くは母を看取らねばならないことを思うと、まったく他人事ではいられませんでした。
 遺品に亡き人の思い出を浮かべ、感謝とともに処分することが、果たしてボクにできるかどうか。
 父、そして父が溺愛していたわんこの遺品は、割と勢いに任せて大ナタを振るうように思い切り処分できましたが、捨てるに捨てられないモノも案外残っています。
 母が亡くなったら、どうなるかなぁ。
 同じように思い切り処分できない気もするし、できたとしても、しばらく腑抜けのようになって、人でなしに成り下がってしまうかもなぁ。

 歳を重ねると、死というものを強く意識せざるをえないのは、いたし方ありません。
 ただ、感謝のキモチとともに、与えられた命はしたたかに全うしようとは思っています。


●監督:小沼雄一 ●脚本:鈴木史子 ●音楽:岡出莉菜 ●原作:河崎啓一(エッセイ『感謝離 ずっと一緒に』/双葉社刊)