一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

さくら

私的評価★★★★★★★★☆☆

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映画『さくら』公式サイトより引用

 (2020日本)

 音信不通だった父が2年ぶりに家に帰ってくる。スーパーのチラシの裏紙に「年末、家に帰ります」と綴られた手紙を受け取った長谷川家の次男・薫(北村匠海さん)は、その年の暮れに実家へと向かった。母のつぼみ(寺島しのぶさん)、父の昭夫(永瀬正敏さん)、妹の美貴(小松菜奈さん)、愛犬のサクラとひさびさに再会する。けれど兄の一(ハジメ/吉沢 亮さん)の姿はない……。薫にとって幼い頃からヒーローのような憧れの存在だったハジメは、2年前のあの日、亡くなった。そしてハジメの死をきっかけに家族はバラバラになり、その灯火はいまにも消えそうだ。その灯火を繋ぎ止めるかのように、薫は幼い頃の記憶を回想する。それは、妹の誕生、サクラとの出会い、引っ越し、初めての恋と失恋……長谷川家の5人とサクラが過ごしたかけがえのない日々、喜怒哀楽の詰まった忘れたくない日々だ。やがて、壊れかけた家族をもう一度つなぐ奇跡のような出来事が、大晦日に訪れようとしていた─。

(映画『さくら』公式サイト「STORY」より引用)
sakura-movie.jp


 未だ、相棒と思って一緒に暮らしてきた飼い犬の死を乗り越えきれてないボクです。
 予告編を観て、犬の映画、しかも相棒と似ている……かも知れない^^;白っぽい犬が登場する映画。
 観ないという選択はないやろ^^;


 個人的な動機はさておき。


 まぁ。いつも思うことなんだけど、少なくとも成人した俳優さんが中学生を演じるのは、無理筋です^^;
 小松菜奈さんの体格だと、頑張っても高校2~3年生くらいまでじゃないですかねぇ?
 中学生は、もっと骨格が未発達で華奢なイメージなんですけど、同級生の子らも、あんまり中学生っぽくない体格だったかなぁ。

 しかし、小松さんのあの力強い眼差しで、ねっとりと粘りつくような薄ら笑いを浮かべられると、ぞわっと戦慄が走るのを禁じ得ませんね。
 美貴のハジメに対する、危ういまでに強い思いが、正直、絶望的にしんどかったです。
 一線を越えてしまいそうなほどの独占欲。
 独占したいのに、思いを遂げられないことで、余計に募る嫉妬と恋慕。
 観ててホントに胸が悪くなりそうなほど、しんどかったんですけど。
 実際、どうなんかなぁ。
 美貴自身は、もっと苦しかったんかなぁ。
 人間関係が淡白なボクには、そこまでの強い思いを持ち続ける根性がないので、美貴の気持ちは想像しても分かりませんが。


 どんなにシアワセそうな家族でも、何かしら他人様には知り得ない瑕のようなモンがあると言われます。
 長谷川家も、長兄のハジメが亡くなるまでは、傍から見れば幸せそうな家族だったことでしょう。
 しかし、ハジメが亡くなるまでには、兄弟妹の間に、他人には分かり得ない歪みが生じていたのだと思います。

 捻じれ、拗れ、縒れる。
 明るく、みんなのヒーローだったハジメが、次第に壊れていく。
 ハジメの死に対して、父、母、弟、妹、家族それぞれが、さまざまな思いを抱えながらも、重苦しい事実をきちんと受け止め、前向きに力を合わせて立ち直っていくことができない。
 家族は、本音を隠してきれい事だけで飾り立ててみても、関係を維持できないほど互いが密なのだ。
 やがて、誰かが誰かを叱ったり責めたりするでもなく、互いを慈しみ励まし合うでもなく、家族の心はバラバラになって、父が家を出て行ってしまう。

 父は、逃げた。居たたまれなくなって、逃げてしまった。
 息子の死に、責任を感じたのだろう。
 娘を導くこともできなかった不甲斐ない自分を責めながら、娘が隠し持っていた獲物を奪って、出て行ってしまったのだと思う。


 その父が、2年ぶりに家に戻るという知らせを受けた次男の薫の回想で、ボクらは家族のヒストリーを知ることになります。
 決して裕福とは言えないまでも、ありふれた幸せを共有してきた5人の家族。
 そこには、美貴が里親探しで引き取った(正確には、一緒に付き添ってた薫が決めてしまった^^;)犬の〝さくら〟がいつも一緒に居ました。
 
 犬を飼ったことがある方なら分るでしょうけど、特に屋内で家族と一緒に過ごす犬は、家族の中で緩衝地帯のような存在になります。
 家族がケンカをしたり険悪な雰囲気になると、一見攻めている方に向かって、止めるように吠えたり、諫めるように前足を膝の上に置いたりして、平和を取り戻そうとします。家族の方も、何かしら気づまりなことがあると、犬を散歩に連れ出すことで、気持ちを落ち着けたりしようとします。

 映画のタイトルは犬の名前ですが、決して犬が主役的な作品ではないし、どちらかと言えば、犬を飼っている家族の物語の中、さり気なく日常の光景として犬が溶け込んでいるような扱いです。
 だけど、そこがいい。
 決して出しゃばらないのに、作品タイトルになってるくらいだもの。
 肝心なときには、家族の気持ちを一つにしてくれる、特別な存在になるんです。


 あまりにも重い出来事が続いて、打ちのめされるような気持ちにもなったけど、犬のいる暮らし、やっぱりいいよなぁ。
 どんなに辛いことがあっても、未来に希望が持てるような作品で良かった。
 いつか。また、犬を飼いたい。


西加奈子さん原作の映画化作品
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※犬が主役じゃない^^;家族のドラマ
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※親が出戻って、再生する家族のドラマ
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●監督:矢崎仁司 ●脚本:朝西真砂 ●音楽:アダム・ジョージ ●原作:西 加奈子(小説『さくら』/小学館 刊)