一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

佐々木、イン、マイマイン

私的評価★★★★★★★★★☆

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映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイトより引用

 (2020日本)

 石井悠二(藤原季節さん)は、俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送っていた。 別れた彼女のユキ(萩原みのりさん)との同棲生活も未だに続き、彼女との終わりも受け入れられない。
 そんなある日、高校の同級生・多田(遊屋慎太郎さん)と再会した悠二 は、高校時代に絶対的な存在だった “佐々木”(細川 岳さん)との日々を思い起こす。 常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが佐々木の身に降りかかる“ある出来事”をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れはじめる——。

 そして現在。 後輩に誘われ、ある舞台に出演することになった悠二だったが、稽古が進むにつれ、舞台の内容が過去と現在とにリンクし始め、加速していく。
 そんな矢先、数年ぶりに佐々木から着信が入る。悠二の脳内に鳴り響いたのは、「佐々木コール」だった。

(映画『佐々木、イン、マイマイン』公式サイト「STORY」より引用)
sasaki-in-my-mind.com


 高校時代も、つまらんかったなぁ。
 部活や文化祭・体育祭とかで、羽目を外すほど、はっちゃけた記憶も皆無だし、ドキドキするような恋もせんかったし。
 あぁ、強いて言えば、アイドルのコンサートに行って春休みの補習をサボったら、思いのほか影響を無視できない人数がサボってたため学校にバレてしまい、翌朝、それぞれが担任に職員室に呼び出され、ボクの場合は大声で叱責されるとともに一発ゲンコツを脳天に食らったという思い出はある。『その子がアンタの将来をどうかしてくれるんか!』って、未だに脳裏にこびりついてるけど、その言葉をくれた先生は、とっくの昔に鬼籍に入られている。

 オッサンのくだらん回想はさておき。


 悠二の回想。この物語の主人公は、あくまで俳優志望の悠二。

 どうやら、これから演劇の舞台に立つ、その直前の緊張感の中で、何かが悠二の中で蘇って来ている。

 佐々木コール。

 さ・さ・き!さ・さ・き!
 佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!佐々木!

 次第に速まる手拍子とともに魂を揺すぶるように響く佐々木コール。


 転じて、バスの中。
 スーツ姿にスリッパの違和感。


 高校時代。
 4人で自転車で疾走した学校の帰り道。
 教室に集まった男子たちが発する〝佐々木コール〟の輪の中で立ち上がる、モジャモジャ頭のハダカ男子の背中と尻。


 特に何かが秀でているワケでもない。
 歓声の真ん中に居るけど、ムードメーカーというのとも、ちょっと違う。
 だが、なぜか人を惹きつける。いや、強烈に巻き込む生命力のカタマリ。

 ヒーロー……勝手に、心の中で、ヒーローになってしまってる。
 別に、そう決めたつもりもないんだけど、忘れようとして忘れ得ない存在。
 卒業して、疎遠になったとしても、不意に思い出して、気にかかってしまう存在。
 取り立てて、カッコいいワケじゃない。
 むしろ、不器用だけど。
 やっぱり、彼の生きざまは、まぶしかった。


 佐々木みたいな突き抜けた存在、ボクのトモダチ関係に居ったかなぁ。
 あぁ、ひとり心当たりが……けど、アイツも早世してもたなぁ。
 強烈に周りを巻き込むように猛アピールするけど、どっかしら、寂しそうだったなぁ。


 なんかこう、青春時代のしっぽをギュッと鷲掴みにされ、ぶりぶり振り回された気分。
 やられた……めちゃくちゃだけど、愛おしい作品だった。


●監督:内山拓也 ●脚本:内山拓也、細川 岳