一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

10万分の1

私的評価★★★★★★★★☆☆

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映画『10万分の1』公式サイトより引用

 (2020日本)

 いつも、桐谷蓮(白濱亜嵐さん/EXILE/GENERATIONS)の姿を目で追いかけている。今日も、そんな自分に気づく桜木莉乃(平祐奈さん)。同じ高校で同じクラス、でも莉乃にとって学校一人気者の蓮は憧れの存在、その姿を見ているだけで十分だった。
 ある日の放課後、莉乃の気持ちを知っている親友の橘千紘(優希美青さん)が、彼氏で蓮の親友でもある比名瀬祥(白洲 迅さん)とのデートを口実に、莉乃と蓮が2人で帰れるように仕向けてくれる。
 翌日、前の席の蓮から莉乃に渡されたプリントに、「昼休み、二人で話したい」という付箋が。「これって、告白?」と舞い上がる莉乃だったが、屋上で待っていた蓮からは、昨日、電車の中で落とした手帳を差し出される。それは、ムカつくと一句詠むという、莉乃の秘密のノートだった。
 「ありがと」と何とか笑顔で受け取って走り去り、プールサイドで激しく落ちこんでいる莉乃のもとに、意外にも蓮がやって来る。「好きだよ」と突然告白され、動揺する莉乃。自分に自信がなく、「そんなわけない」と信じない莉乃に、蓮は「とにかく全部好きなんだ。自分でも、変な子好きになったと思うけど」と屈託なく笑うのだった。
 その日から、初めての両想いの日々が始まる。見つめ合い、微笑み合い、なんでもない言葉を交わすだけで幸せだった。両親を事故で亡くした莉乃は、たった一人の家族である祖父の春夫(奥田瑛二さん)にも蓮を紹介する。
 そんな中、心配ごとが持ち上がる。莉乃の足が時々、動かなくなってしまうのだ。病院で検査を受けるが、医師から「ALSの可能性がある」と告げられる。「10万人に1人の確率でかかる難病」だと知った莉乃は、蓮に迷惑をかけないために別れようと決意する。だが、蓮は「見くびらないでよ。オレは後悔しない。こんなに大切な人に出会えたんだから」と力強く宣言するのだった。

(映画『10万分の1』公式サイト「STORY」より引用)
100000-1.com


 『弱虫ペダル』『旅猫リポート』の三木康一郎さん監督作品です。


 大の苦手とする〝いちゃラブ〟と見せかけておいて、意外にも、硬派な物語に。

 高校生の主人公が、難病〝ALS(Amyotrophic lateral sclerosis)=筋萎縮性側索硬化症〟を患ってしまうという状況。

 『恋愛中のカップルや長年連れ添った夫妻などに、死を意識せざるを得ないような困難な病気が突然襲いかかり、苛烈な状況に陥ったが故に一層深まる二人の愛の深さを目の当たりにして、涙なしでは観てられないような感動を覚える』というドラマの設定・手法は、言ってみれば使い古されたヤツではあります。

 それも、大抵の場合、愛し合う二人に死別と言う最も過酷な試練を与え、それによって愛情の純度をより一層高め、エッセンスを絞り出して観客に感動を与えられれば、急性白血病でもステージ4の膵臓癌でも、病名は実は何でもよくって、病は単に究極の状況を突き付けるための手段でしかなかったりします。

 もちろん、実話ベースのお話は、別格としなければならないでしょうが、完全な創作の場合、なんか取って付けたような無理くりの設定が、噓臭くって、「感動の押し売りじゃない?」みたいなマイナス・イメージを感じる作品も、ままあると思うんです。


 ただ。この映画は、そこんところ、ちょっと視点が違う気がしました。


 主人公を演じた平祐奈さんは、役作りとともに治療法の確立していないALSという難病のことをこの映画を通じてより多くの人々に知ってもらうため、前もって患者さんにお話を伺って、ALSに対する理解を深めてから演技をしたそうです。

 平さんが突如として脱力し、ストンと落ちるように何度も倒れ込むシーンは、鈍く腹に堪える激しい衝突音とともに、観ているボクまで絶望感を覚えるほどの気迫を感じました。

 この映画は、ドラマの質をスポイルすることなく、広く世間の方にALSという病を認知・理解してもらえるように、主人公の病状の進行具合や他のALS患者さん宅の訪問の様子など、さまざまなエピソードを組み込んでいます。

 次第に筋肉が思うように動かせなくなる果てには、命を司る主要な臓器まで機能が低下し、若くして死ぬことになるかもしれないという、この根治困難な病を扱うことによって、恋愛ドラマ的にただただ観る者を泣かせるんじゃなくて、ALSで直面する日々の暮らしの困難や、病の経過により患者が抱くキモチの変化などを、ありのままに伝えようとしているのだと思います。


 ところで、ボクは純愛なんて、こっ恥ずかしいドラマで泣くのは癪に障る性分ですが、この映画でも二人のエピソードで泣かされることは、ほぼありませんでした。

 だがしかし。

 終盤の卒業式のシーン。見え見えであざといとは思ったけど、号泣させられました。

 どんなカタチであれ、人の情の厚さに触れることは、魂の洗濯になります^^;




【 ここからネタバレあります。 】


 最後は、どうなるのでしょう?

 まだ卒業から、さほど時間が過ぎていってないのかな?

 主人公の病状は詳らかに描かれません。

 これは、優しさなのかな?

 まだ、主人公を死なせない。重症化したところまで見せない。

 近い将来、治療法が確立して、根治する日が訪れることに対する希望…。

 病の怖さ、悲しさを強調するんじゃなく、主人公の生き方を描くことによって、希望を抱かせる。

 今もさまざまな困難に直面しているALS患者さん及びその家族の皆さんに対するメッセージかも知れません。

 希望で終わる。ステキな終わり方じゃないかなぁ。

 主人公が亡くなってしまうようなナイーヴな終わり方より、断然イイと思います。

 脚本家さん、監督さんの優しさを感じました。



※ボクが知っているALS患者の著名人の方々(Wikipediaから抜粋して引用

ルー・ゲーリッグ1903年 - 1941年)- 野球選手[7][44]
篠沢秀夫(1933年 - 2017年)- フランス文学者
土橋正幸(1935年 - 2013年)- 野球選手、監督
徳田虎雄(1938年 - )- 医師、衆議院議員
スティーヴン・ホーキング(1942年 - 2018年)- 理論物理学
佐伯チズ(1943年 - 2020年) - 美容アドバイザー[45]
芦原英幸(1944年 - 1995年)- 空手家
舩後靖彦(1957年 - )- 参議院議員
恩田聖敬(1978年 - )- 元FC岐阜社長[50]


※死を意識せざるを得ない病にかかったときのヒントがあるかも知れません。
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●監督:三木康一郎 ●脚本:中川千英子 ●音楽:小山絵里奈 ●原作:宮坂香帆(コミック『10万分の1』/小学館フラワーコミックス刊)