約束のネバーランド
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2020日本)
その楽園から、脱獄せよ。
私たちの未来のために――。
幸せに満ち溢れた楽園のような孤児院、
「グレイス=フィールドハウス」。
そこで暮らす孤児たちは、
母親代わりでみんなから“ママ”と呼ばれている、
イザベラ(北川景子さん)のもと、
里親に引き取られる年齢になる日を待ちわびていた。
エマ(浜辺美波さん)、レイ(城 桧吏さん)、ノーマン(板垣李光人さん)の3人も、
いつか外の世界で暮らすことで、より幸せな日々がやってくると信じていた。
“その日”がくるまでは……。
* * *
里親が見つかり、
孤児院を笑顔で後にするコニーを見送ったエマとノーマンは、
彼女が肌身離さず抱きしめていた人形が、
食堂に落ちているのを偶然見つける。
忘れ物の人形を届けるため、決して近づいてはいけないと、
ママから教わっていた「門」に向かった2人がそこで目にしたのは、
無残にも命を奪われ、食料として出荷されるコニーの姿だった。
そう……、
みんなが「楽園だと信じていた孤児院」は、
実は「鬼に献上する食用児を育てる農園」で、
さらには母親のように慕っていたママは、
「最上級の食用児を育てる飼育監」だったのだ。
全てが偽りだったと気がついた3人は、
孤児たち全員を引き連れた、
無謀ともいえる脱獄計画をスタートさせる…。
(映画『約束のネバーランド』公式サイト「STORY」より引用)
the-promised-neverland-movie.jp
昔、クリスマス前に脱走するニワトリが主人公の脱出ゲームをやったことがある。
人間の食卓に並ぶ運命に抗って、自由を求めて脱出に成功したあと、ヤツはシアワセな人生(鶏生?)を送れたのだろうか?
どうでもイイ話だったな。
幼少期から、しばしば逃げる夢を見る。
何に追いかけられ、何に追い詰められているのかも分からないまま、ひたすら、逃げる。逃げる。逃げる……。
見知らぬ学校の校舎の中、狭く入り組んだ廊下を駆け抜ける。
思ったように足が運ばず、もどかしい。
背中に追跡者の集団の熱量をひしひしと感じながら、やがて突拍子もなく広い空間に飛び出すと、大きく大地を蹴り飛ばす。
ギリギリで追手の伸ばした腕をすり抜けて、大空に羽ばたく……。
「逃げ切った!」
しかし。
手足をジタバタさせるも、すぐに高度が下がってゆき、突然一気に急降下。
追手の集団が待ち受ける広場の真ん中に向かって、真っ逆さまに落ちていく……。
そこで、目覚める。
まだ、胸の動悸が収まらない。
いったい、何が現実なのか、茫洋とした頭には、判然としない。
ボクは、まだ囚われの身なのだろうか、と……。
どうでもイイ話だったな。
濃密な2時間。
多少、大仰なBGMがうるさいと感じる場面はあった。
しかし、美しい緑に囲まれた楽園で、静かに、穏やかに成長していく孤児たちの柔らかな笑顔と、決して目が笑っていない〝ママ〟の冷たい微笑の対比に、終始胸騒ぎが止まらない。
原作は読んでないけれど、2時間の尺にうまくストーリーを収めていたんじゃないかと思う。
脱出劇と言えば、S.マックイーンの『大脱走』を始め、拘束する側と脱出する側との抜き差しならぬ駆け引き・騙し合いが物語の主眼になるが、本作はその辺、相手を出し抜こうとして失敗し、さらにその上を行こうと目論むもまた食い止められ、次第次第に追い詰められた中で繰り出す最後の一手が……という展開が実にうまく構成されていて、最後まで見飽きなかった。見事だと思う。
たとえ16歳までの短い年月でも、楽園で幸せに満ち溢れた(と思い込まされた)人生を送るのが良いか。
楽園から脱出して、一気に世知辛くも厳しい世間の荒波にもまれながら、歳老いていく人生を送るのが良いか。
ただ、その選択を、誰かに決めつけられる人生は、イヤだな。
* * *
北川景子さんが、めっちゃ怖かった。ママの心の根っ子のどこかに、情けがあって欲しいと切に願いながら、それでも終始怖くて仕方ないほど、キレてた。
この方、映画出演多いな、と思うけど、役の振り幅、極端な印象。
それだけ色んな役に入れるってことなのかな? だから色んな監督さんに重宝がられて出演が多いのかしら?
いずれにしても、「さすが女優、すげー!」ってことで、リスペクトしてやまないのである。
●監督:平川雄一朗 ●脚本:後藤法子 ●音楽:得田真裕 ●原作:白井カイウ(作)/出水ぽすか(画)(コミック『約束のネバーランド』/集英社ジャンプコミックス刊)