一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

大コメ騒動

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

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映画『大コメ騒動』公式サイトより引用

 (2021日本)

 
「コメを旅に出すなーーー!」

 3人の子を持つ“おかか”であり米俵を浜へと担ぎ運ぶ女仲仕として働く松浦いと(井上真央さん)は、17歳で漁師の利夫(三浦貴大さん)のもとへ嫁いできた。小さな漁師町で暮らすおかかたちは、家事、育児、そしてそれぞれの仕事をしながら、夫のために毎日一升のコメを詰めた弁当を作り、漁へと送り出している。ある日、高騰するコメの価格に頭を悩ませていたおかかたちは、リーダー的存在である清んさのおばば(室井滋さん)とともにコメの積み出し阻止を試みるも、失敗に終わる。その騒動は地元の新聞記者により「細民海岸に喧噪す」と報じられ、またそれを見た大阪の新聞社は陳情するおかかたちを“女一揆”として大きく書き立て、騒動は全国へと広まっていく。そしてある事故をきっかけに我慢の限界がきたおかかたちは、さらなる行動に出るが——。

(映画『大コメ騒動』公式サイト「おはなし」より引用)
daikomesodo.com


 う~む。微妙な空気感の作品だなぁ……コメディだとしたら、笑えない。なのに、コメディタッチな小ネタを微妙に仕込んでるんだよなぁ。
 大正7(1918)年に起きた米騒動の発端として、富山県で起きた〝越中女房一揆〟という、割とシビアな史実ベースのストーリーに、微妙にコメディ要素を交えたことで、どうも中途半端な作品になってしまった印象でした。

 同じ本木監督の『超高速!参勤交代』みたいに、そもそもの課題が〝ありえない無茶振り〟で始まるお話だったら、基本、終始笑わせつつも、最後に本格的な時代劇の大立ち回りで鮮やかな殺陣を堪能させ、大いに満足感を与える、という作品作りがマッチすると思うんですよ。だけど、史実に基づくシビアなお話だからなぁ。なんでこんな作品にしちゃったかなぁ。

 イチバンいかんなぁと思ったのが、室井滋さん演じる清んさのおばばですよ。アップで映し出されるシーンが何度も出てきますが、わざとなのかどうなのか、たくさんの大粒の黒ずんだイボが顔の表面から浮き上がってるようにしか見えず、彼女一人の過剰なメイクのおかげで、作品の根っ子がふざけているようにしか思えなくなってしまったんですね。セリフや立ち回りも大げさ過ぎるし、実在する人物には見えないキャラづくりに思えました。彼女の役柄を、ちゃんと現実的なメイク、現実的なセリフ回し立ち回りにした上で、皮肉のきいたユーモアでも交えたなら、クスッと笑いつつも、米の価格高騰というシビアな現実にあえぐ貧しき浜の女房たちの困窮ぶりをちゃんと受け止められたと思うんです。

 そして、女房どもがクライマックスの一揆に再び立ち上がるきっかけまで、本当に最後の最後までふざけた筋立てが仕込まれているのを目の当たりにして、一体どこに感情を持っていけばいいのか分からなくなってしまった感じです。大いに笑うには貧しさに困り果てたあげく亡くなる人も出るようなシビアなお話なのに、超格差社会の底辺にあえぐ貧しき人々+「集まっても何も変わらない」とまで男に言われる社会的立場の低い女性たちの義憤に共感するには、微妙なコメディタッチが邪魔くさいという……なんか、惜しい気がするなぁ。痛快とは言えない、モヤッと感だけが残りました。

 工藤遥さん演じる私塾の先生の生真面目すぎるほどの堅物ぶりが、作品の流れの中で浮いて見えてしまったのが、なんか切なかったです。


 ちなみに富山県を舞台にしたお話を富山県でロケし、立川志の輔さん、左時枝さん、柴田理恵さん、西村まさ彦さん、室井滋さん、内浦純一さんら富山県出身の役者さんたちが大勢出演なさっています。
 で、監督の本木克英さんも富山県出身と、オール富山で作ったような映画でした。
 そしてコメディタッチの大コメ騒動の主題歌は、米米CLUBの「愛を米て」^^;
 そうなるとプロモーションもたぶん米使ってるだろうと思ったら、案の定。


【コメ(米)ントwebCM解禁】映画『大コメ騒動』全米(コメ)が泣いた編


 あと、富山弁、すげーな。聞き取れない、意味分かんない、でも、威圧感ハンパない!


●監督:本木克英 ●脚本:谷本佳織 ●音楽:田中拓人