一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

東京少女

私的評価★★★★★★★★★☆

東京少女 (通常版) [DVD]

 (2008日本)

明治⇔平成
——別々の時代を生きる男女が、ひとつのケータイ電話を通じて出逢った。

地震によって主人公・未歩(夏帆さん)のケータイ電話が落ち、
明治時代にタイムスリップ。
受け取ったのは小説家志望の青年、時次郎(佐野和真さん)だった。
決して逢うことが出来ない二人が、
月が出ている時にだけ繋がるケータイ電話で
会話を交わし、ほのかな恋心を寄せ合っていく。
(DVDパッケージより引用)


 あまりにも激しく感情を高ぶらせると、何で涙があふれ出てるのか、意味が分からなくなります。
 いや、涙があふれ出ることに、意味なんて関係ないのです。
 潔く、泣いてイイのです。

 筋書きが見え見えで泣かされる作品は、シンプルに素晴らしいと思っています。
 本作も、成り行きを見ていれば、もう、なるべくしてなるよねと予想される終劇に向けて、潔くストーリーが収斂していきます。
 しかし、とにかく、純粋に〝人を思いやる気持ち〟に触れて、心が激しく高ぶってしまい、号泣せずにはいられなかったのですね。

 それは、ストーリー構成の素晴らしさ、登場人物を少人数に絞ったが故の焦点の深さ、親子関係にまつわる少女の心の揺らぎや、小説家を志望しながら悉く作品が評価されない青年のもがくさまなどに絡めて、本作中で交わされるすべての会話が無駄なく無理なく自然に配された脚本の妙であり、それを実に巧みに演じた夏帆さんと佐野和真さんの素晴らしい演技であり、そしてすべてを束ねて素晴らしい作品に仕上げた小中監督はじめ、スタッフ全員の奇跡の仕事の成果であると思うのです。
 かなり、イキって大げさに書いちゃいましたが、それくらい感動に震えました。
 安っぽい感動体質で、すんません^^;



 夏帆さん演じる未歩の変化に注目。

 母親の再婚話に動揺し、イライラを抑えきれず、険しい顔つきでいきなり登場。
 紛失した携帯電話に出た時次郎の、腑に落ちない対応にイラつきヒートアップ。
 暴言が過ぎたと反省し謝るも、再びあり得ない住所を告げた時次郎にイライラが爆発、暴言を吐いたあと、また自己嫌悪。
 100年の時空を超えて通話していることに気付き、互いのことを少しずつ知ることで次第に時次郎に好感を抱くようになり、穏やかな表情に。
 再婚話で、自分が母親に置いて行かれるような不安な気持ちを抱いてイラついてしまっていることを話すと、自身のことに触れながら的確な言葉をくれた時次郎にさらに好意を寄せる。
 恋する乙女の明るく溌溂とした表情で、時空を超えた銀座デート。
 そして、不意に訪れるタイムリミット。人を想う気持ちに感情が爆発して、慟哭。

 16歳の少女の、心の成長を丁寧に描いていて、とにかく夏帆さんの等身大の演技が素晴らしい!



 時空を超えて現代と過去の人物が交わると、未来を変えてしまうという〝親殺しのパラドックス問題〟から、どうしても無理筋が出てしまうものです。
 しかし、本作は、物語の世界観をブレることなく最後まで貫き通し、違和感を挟む間もなく綺麗に筋立てをまとめ上げ、フィニッシュは内村航平選手の美しい着地のように見事に話を落としていました。
 観終えた後にスッキリした納得感があり、何とも言えず爽快な気分になりました。
 特に、時空を超えた人と人とのつながりを目の当たりにし、そのつながりの意味を知ったときの驚き。
 〝人を思いやる気持ち〟の尊さに、一気に感情が高ぶって身震いが止まらず、あふれ出る涙を堪えきれず、ひとり深夜に声を押し殺して泣いてしまいました。
 それは、本作が〝時の流れ〟を強く意識させているからだと感じました。

 タイタニック号の沈没事故のくだりで、時空を超えたふたりの関係性は、〝結果としての未来〟を知っている未歩の方が精神的に優位だと思えます。
 しかし、結論から言って、未歩は過去の出来事には触れられない=過去に起こった出来事の事実は変えられないワケで、そこにこの物語が破綻しなかった大きな理由があると考えます。
 逆に、過去の人=時次郎は、未来に託すことができる=手鏡を贈る(あと、これは現代よりさらにその先の未来を変える大事なモノも、ね)奇跡が起こせてしまうところに、物語の面白さがあり、さらにこの出来事が単なるデートの一コマとして以上の意味を持つことに、本作の脚本家のストーリーテリングの巧みさを感じました。
 ツッコミどころは、つつけばいくらでもあるけれど、本作でそれをやるのは野暮でしかありません。
 見たままをありのままに受け止める寛容さとピュアなハートが大切です^^;


 人と人とのつながりがギリギリ実感できる100年という時間の区切り。
 人が為すべきことを為し、その結果が歴史として刻まれることを体感できる100年という時間の区切り。
 そして、携帯電話のバッテリーの充電が切れるまでという限られた時間の区切り。

 限られた時間の中に生きることの意味を深く胸に刻み、今ここに在ることに感謝しながら為すべきことを為し、未来に向けてしっかりと歩いて行くことに思いを馳せるボクがいました。



 最後に。
 ぜひ、「ありがとう」の意味に、涙してください。
 名わき役・森康子(もりこうこ)さんの絶妙の演技に、二度、涙腺崩壊しますから。



※タイムスリップ物は、切ないけれど……。
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●監督:小中和哉 ●脚本:林誠人