一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら

私的評価★★★★★★★★★★

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映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら』公式サイトより引用

 (2021日本)

もしも日本を代表する名脇役100人で映画を作ったら…
映画はちゃんと完成するのか!?

 富士山の麓にあるのどかな撮影所バイプレウッド。
 民放各局の連ドラや映画など沢山の組が撮影していて100人を越える役者たちで大賑わい。
 田口トモロヲ松重豊光石研遠藤憲一ら元祖バイプレイヤーズもネット連ドラを撮影中。
 主演は有村架純だ。
 楽しく撮影が始まろうとした時、有村が共演している犬の風(ふう)がいないことに気づく。
 風は行方不明になっていた。
 心配する有村に、田口、松重、光石は風に何があったのか語り始める。

 一ヶ月前、濱田岳柄本時生菜々緒高杉真宙芳根京子ら若手の役者たちが「月のない夜の銀河鉄道」という自主映画の撮影を始めていた。
 監督は濱田、主人公は小さなチワワだがラストに100人の役者がSLで祝杯をあげるという壮大なストーリー。
 車掌役で参加してくれた役所広司もそのシーンの撮影を心待ちにしている。
 だが…実は役者は全く集まっていない。しかも超低予算でスタッフを役者が兼務する有り様。
 やがて主役のチワワは逃げ出し、SLも撮影目前でロケを断られ路頭に迷う始末。そのくせ濱田は監督風を吹かせるので菜々緒、高杉、芳根も呆れて濱田組を降りてしまう。
 落ち込む濱田、時生を見かねた田口ら元祖バイプレは自分たちのスタジオのSLセットを貸してあげることに。
 一方、菜々緒は敬愛する天海祐希と出くわす。
 天海はバイプレウッドに買収話が上がっていることを憂いていた。
 そこでバイプレウッドを愛する天海と菜々緒は一念発起、撮影所の存続をかけ署名を集めるためにバイプレウッド中の役者に声をかけはじめる。
 かたや濱田と時生は再び100人の役者を集めるべく撮影を再開するが、同じスタジオには勝村政信渡辺いっけいなど厄介な名脇役おじさんたちが大勢いて、ことあるごとに邪魔されストレスが膨らむ。
 そんな若い彼らを陰ながら見守る田口、松重、光石は何か秘密を隠しているようで…
 こうしてそれぞれの思いが交錯、やがて役者同士のぶつかりあいに発展!
 犬の風もそれに触発されたのか撮影所中を駆けずり回り大暴れ!
 連ドラ、大河、朝ドラ、映画チームなどバイプレウッド全体に嵐を呼ぶ大騒動を巻き起こす!
 こんなんで100人の役者の映画は完成するのか!?
 そしてそんなドタバタ悲喜劇を越えると映画史上初の試みのとんでもないラストが待っている!
 100人だからこそ成し遂げられる未体験の温かな感動がスクリーンを包む!

(映画『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら』公式サイト「STORY」より引用)
byplayers.jp


 『月のない夜の銀河鉄道』なのに…ま、それはエエねん。

 大杉漣さんが亡くなられたとき、『バイプレイヤーズ』という番組のことを知りましたが、ついぞ観る機会に恵まれませんでした。大杉さんは、本作のテレビシリーズのこと、映画化のこと、アツく語っていたとかい言うようなことを、松重さんや田口さんらのお話から聞いていたように記憶していました。亡くなられてから3年も経つんですねぇ…。

 で、劇場通いの中で本作の予告編を観たら、「本編を観ずにはいられんでしょう」と、興奮を掻き立てられてて、本日、やっとお目にかかることができた、そんな感慨に浸ったところであります。

 モノづくりにかける情熱、特にアツい役者魂が全編にたぎる、素晴らしい作品でした。
 民放各局・公共放送・映画などの人気作品のパロディを仕込んで、各撮影現場の映像を随所に織り込みながら、100人の名脇役(中には主役級も混じってますが)たちをちょいちょい出し入れして見せます。どこの現場に誰がいるのか、それを確認するだけでも、ワクワクしてきて、すごく楽しめそうです。
 しかも、全員実名で本人役! なんてパラダイスな作品でしょうか!

 ストーリーは、濱田岳さん率いる若手俳優5人組が自主映画を撮影する、というエピソードを軸に、撮影所の外資による買収話が絡み、一方で松重豊さん、田口トモロヲさん、光石研さん、遠藤憲一さんの元祖バイプレイヤーズが何か秘密を隠しているらしい、という、何やら落語の人情噺を彷彿とさせる仕掛けがいっぱいというお話。

 転機は天気^^;
 突然訪れた激しい雷雨と強風で撮影所はぐちゃぐちゃに。
 天候の異変をいち早く察知した撮影所住まいの老犬・風(ふう)は、嵐の到来を予告するように各撮影所を走り回ってかき回した挙句に行方不明に……その先に見えた衝撃的な画に、一瞬凍り付いてしまいました。
 この辺りの展開には、激しく胸をかき乱されて動悸が上ずってしまいましたが、そこからのストーリーの落とし方までは、実に素晴らしい演出だったと思いました。
 もう、最後の方は、予想はしてても二度も三度も、ぶわっと涙腺崩壊させられましたよ。

 とにかく、さり気なく映し出した〝一枚〟の演出、そのセンスに思わず拍手せずにはいられないほどの感激で胸の震えが止まらず、涙ダダもれにさせられました。

 何と言うのか、出演者、制作者、観覧者、みんなの中に〝人を思いやる気持ち〟が溢れて止まない、そんな感慨に包まれました。
 ボクの拙い文章では表しきれないほど、素晴らしい作品でした。

●監督:松居大悟 ●脚本:ふじきみつ彦、宮本武史 ●主題歌:Creepy Nuts『 Who am I』(ソニー・ミュージックレーベルズ