ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~
私的評価★★★★★★★☆☆☆
(2021日本)
誰もが知るあの栄光の裏には、
誰も知らない25人のテストジャンパーたちが起こした、
奇跡があった──。
長野オリンピック・ラージヒル団体で日本初の金メダルを狙うスキージャンプチーム。そこに、エース原田(濱津隆之さん)のジャンプを複雑な想いで見つめる男─元日本代表・西方仁也(田中圭さん)がいた。前回大会・リレハンメルオリンピックで、西方は原田とともに代表選手として出場するも、結果は銀メダル。4年後の雪辱を誓い練習に打ち込んだが、代表を落選。失意の中、テストジャンパーとしてオリンピックへの参加を依頼され、屈辱を感じながらも裏方に甘んじる。そして迎えた本番。団体戦の1本目のジャンプで、日本はまさかの4位に後退。しかも猛吹雪により競技が中断。メダルの可能性が消えかけた時、審判員たちから提示されたのは、「テストジャンパー25人全員が無事に飛べたら競技を再開する」という前代未聞の条件だった…。
命の危険も伴う悪天候の中、金メダルへのかすかな希望は西方たち25人のテストジャンパーに託された──。
この隠された真実に、あなたはきっと、涙する──
(映画『ヒノマルソウル ~舞台裏の英雄たち~』公式サイト「Story」より引用)
1998年──もう20年以上経つんだなぁ…。
実話、それも選手は実名で登場、長野オリンピック開催当時の記憶が蘇ります。
そして1994年のリレハンメル・オリンピック、最後に原田雅彦さんが卒なく飛躍し終えれば団体金メダル確実という状況でよもやの失速、夜中にテレビの前で呆然とへたり込んだ記憶までセットで蘇りました。
リレハンメルで団体銀メダルのメンバーだった西方仁也さんが、長野オリンピックに出場していなかったのは知っていましたが、テストジャンパーをしていたことは知りませんでした。というか、テストジャンパーの仕事の重要性についても知りませんでしたし、吹雪で中断していた団体ジャンプ競技の裏で、こんなことがあったことも全く知りませんでした。
そして、金メダルが決まった後のインタビューで原田雅彦さんが「俺じゃないよ。みんなだよ」と言った言葉の本当の意味を、この映画で知ったのです。
まぁ、仕方ないです。
実話の持つ力には、泣かされっ放しになるしかありません。
実際の西方さんの気持ちがどこまで再現されているのかは知りませんが、けっこう最後の最後…団体競技が中断したまま終了するかどうかの土壇場まで、リレハンメルで金メダルを取れなかったことや、長野で五輪メンバーに選出されなかったこと、原田さんに対する嫉妬のような複雑な感情…etc.を引きずってたんだなぁ…と。行き場のない感情…生々しくってドキュメンタリーのようなリアルさを感じました。
そしてこの映画のリアルさを、より一層際立たせている要素が、ジャンプのシーンですね。
公式サイトの監督さんのコメントにありましたが、ジャンプ競技は10歳までに始めないと、恐怖心を克服できないそうなんですね。そのため、他の競技の映画と違って、役者さん自身がスタント無しに競技シーンを演じることは無理とのこと。そこで、ジャンプ台のスタート地点と着地点の映像のみ役者さんに演じてもらったそうなんですが、説明が無ければ気づかないほどトータルでリアルにジャンプ競技の映像が再現されていました。素晴らしい仕事です。
今、東京オリンピック開催に、いろんな意見や感情が渦巻いているところではありますが、頂点を極めることに人生を賭けている人たちのことは、そんな経験を持ち合わせないボクらには到底分かり得ないものです。ボクの記憶の中でも1980年のモスクワ五輪や1984年のロス五輪のボイコットによって、深く傷ついた世界中の競技者の人たちが大勢いらっしゃいました。さまざまな競技を行っている人たちにとって、東京オリンピックは、大切な舞台なのは間違いありません。もちろん、人命軽視はもっての外ですけれど、開催まで1か月を切った現在、何が正解か、誰も責任をもって答えられないところまで来ていると思います。やるならやるで、腹を括ってやりきるしかないのでしょう。
地方住まいのボクには直接関わることはないのですが、困難な状況の中、日本でオリンピックが行われることを決して他人事と思わず、さまざまな人たちに思いを寄せ、せめて自分自身の暮らしの中では、責任ある行動をしたいと思います。
※予告編でも泣いた…;;
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●監督:飯塚健 ●脚本:杉原憲明、鈴木謙一 ●音楽:海田庄吾 ●主題歌:MISIA『想いはらはらと』(Sony Music Labels)