一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

がんばっていきまっしょい

私的評価★★★★★★★★★★

がんばっていきまっしょい コレクターズ・エディション [DVD]

 (1998日本)

 1998年、雨がそぼ降る中、3人の男たちが浜辺の艇庫を訪れます。伊予東高校ボート部の部室だった艇庫は、部が10年前に練習場所を瀬戸内海から内陸の湖に変更したことから、今は廃墟と化していました。ひとしきり荒れ放題の中を見学した3人の男たちは、艇庫の取り壊しを決断したようです。男たちが立ち去ったあと、ボート部の部室の壁に5人の少女たちの写真が貼られているのが見えました。そして、ときは1976年春まで遡ります。東高に入学した悦ネエこと篠村悦子(田中麗奈さん)は、入学前から憧れていたボート部への入部を決意しました。ところが、東高には女子部がなかったのです。あきらめきれない悦ネエは男子部の顧問の教師に直談判し、女子部の創設を申し立てました。女子は、4人の漕ぎ手と“コックス”と呼ばれる舵取り1人の合計5人で行う“ナックルフォア”という競技になることを聞いた悦ネエは、10月の新人戦までという条件で、ヒメ(清水真実さん)、リー(葵若菜さん)、ダッコ(真野きりなさん)、イモッチ(久積絵夢さん)の4人を勧誘し、練習を開始しました。夏合宿を終え、新人戦に臨んだ5人は、参加5校中ダントツの最下位という結果に終わります。競技が終わって、一番運動が苦手だと言っていたコックスのヒメがくやしがり、みんな10月までという約束だったのに、次々とボートを続ける決意を表明します。やがて冬が訪れ、水上での練習ができなくなったころ、女子部にコーチ(中嶋朋子さん)が付くことになりました。コックスとして日本一に輝いたこともあるコーチでしたが、まったくヤル気がなく、部員には丘での練習メニューをくれただけで、全く指導らしいことをする気配がありませんでした。そして2年生の春が訪れ、新入部員が1人加入したころ、悦ネエはギックリ腰になってしまいました…。


 田中麗奈さんの映画デビュー作で有名ですが、実は通しで観たのは初めてです。特典ディスク付きのコレクターズ・エディションが今年発売されていたので、ついに買ってみたワケですが、もっと早く観ておくべきでした。あらゆる意味で、感動モノです。

 いわゆる青春スポ根モノの王道として、基本的な要素はすべて兼ね備えています。家族、友人、教師、幼なじみ、友情、恋、部活、コーチとの確執、挫折、立ち直り…この作品を観て、ボクはつくづく青春スポ根モノに弱いなぁと思いました。スポ根といっても本作は一途に激しく競技にのめり込むのではなく、あくまでボートを通した高校生の少女たちの青春を描いたモノです。ストーリーは2年生の冬で終わりますが、2年間の濃密な青春グラフィティを堪能できます。帰らない日々の切なさや、その時期しか得られない輝き…ストーリーが甘ったるくない、むしろほろ苦さを感じるくらいなので、とっても胸にジンときますね。

 演出では、ときおりスローを使い、水面を行き交う赤いオールだとか、悦ネエが高い堤防の上から砂浜に着地するシーンだとかを印象深く見せてくれます。また、ボートが水の上を力強く進む“推力”のようなモノが感じられるカメラ・ワークが好印象で、特に大会の競技では、『ホントに頑張ったんだなぁ』という感慨に浸れるほど、臨場感溢れる映像になってます。まぁ、とにかく、言葉が思い浮かばないのが歯がゆいくらい、この映画は美しい映像満載です。

 音楽もステキです。リーチェという外国人の女性ヴォーカルみたいですが、たいへん心地よいです。クライマックスでヴォーカルをカットアウトして暗転してみせた手法、あざといけれど、この映画では良かったです。

 方言、伊予弁というんですか? 女の子も方言で喋るの、イイですよね。耳慣れないリズムが案外心地よくって、穏やかな瀬戸内海の風景と併せて、ゆったりと時間が流れていくような感じが出てて、良かったです。

 瀬戸内海を舞台にした映画、大好きです。この映画でも、とっても美しい瀬戸内海の景色を拝めます。

 ヤル気のない中嶋朋子さん、こういう役もうまいなぁ、と。

 初めて満点付けてみました。満点付けるの、勇気要ったんですけど、年末ですし、イッときます。

●監督・脚本:磯村一路 ●原作:敷村良子(小説「がんばっていきまっしょい」)