一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

8日で死んだ怪獣の12日の物語

私的評価★★★★☆☆☆☆☆☆

8日で死んだ怪獣の12日の物語 -劇場版- [Blu-ray]

 (2020日本)

世界は愛でつながっている

 通販サイトでコロナと戦ってくれるというカプセル怪獣を買ったサトウタクミ(斎藤工さん)。毎日怪獣の成長を配信しているタクミの元には、通販で宇宙人を買ったという後輩の丸戸のん(のんさん)や、コロナの影響で無職になってしまった先輩のオカモトソウ(武井壮さん)など、色々な人から連絡がくる。日に日に怪獣は成長していくが、どうもYouTuberもえかす(穂志もえかさん)が育てる怪獣とは種類が違うようだ。怪獣に詳しい知り合いの樋口監督(樋口真嗣さん)にノウハウを聞きながら、日々怪獣を育てていくタクミ。果たしてタクミはきちんと怪獣を育てることができるのか? そして、この怪獣はコロナをやっつけてくれるのか?
(「8日で死んだ怪獣の12日の物語 劇場版」公式サイトSTORYから引用)

12daymonster8.com



 2020年、新型コロナ禍の緊急事態宣言下で、息をひそめるように外出自粛=在宅を余儀なくされたクリエイターたちが、ほぼほぼリモートで制作した作品、のようである。

 正直、決してエンタメ的に面白いとは言えない内容だった。

 外に出られない中で、退屈しのぎに作った、と言えば言い過ぎかもしれないが、逆に言えば、不自由な中でもこんな風に想像力を膨らませて、人は遊べるんだ、ということを示しているとも言えるのか。



 コロナと戦ってくれるというカプセル怪獣は、白い紙粘土細工でこしらえたようなチープな造形で、日々その姿を変えていく。

 その行きついた最終形態が、アレか……確かに、身近にある小さな守護神かも知れない。

 というか、昨年の最初の緊急事態宣言の頃は、さまざまな衛生用品どもが、品薄で手に入らない状況だったな。

 そう思い返すと、今は不自由なく手に入るようになった。とてもありがたいこと、ありがたい存在だ。



 最後に斎藤工さんが語るメッセージは、先行きがさっぱり見えない時期だったあの当時は、現場で命を張って頑張る医療従事者等の大勢の人々や、日常生活をスポイルされ失意に暮れる多くの人々に対するエールや希望の光と言えたかもしれない。

 でも、1年以上経った今では、むしろ次々と現れる変異株の脅威の凄まじさに、本当に先が読めない状況になり……それでも、「ボクら一人一人が小さなヒーローになって結束し、コロナと言う巨大な怪獣を倒す日が来る」と断言できるのだろうか?……なんて風に、疑心暗鬼を募らせるばかりではなかろうか?

 願わくば、コロナ禍が終息し、本作が「そう言えば、そんな作品もあったね」みたいに笑って思い返せる日が、一日も早く訪れますように。

●脚本・監督・造形:岩井俊二 ●原案:樋口真嗣 ●プロデューサー:宮川朋之、水野 昌 ●音楽:蒔田尚昊=冬木透、ikire ●主題歌:小泉今日子+ikire「連れてってファンタァジェン」