一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

十三の眼

私的評価★★★★★★★★★☆

十三の眼 COS-037 [DVD]

 (1947日本)

 殺人を厭わぬ凶悪強盗団が、新聞紙上を賑わしていた。深夜、刑事たちが手分けをして、路上を巡回していたところ、松川刑事(葛木香一さん)と溝部刑事(伊達三郎さん)が、何者かによって殺害される。事件現場の路上には、ひとつの入れ眼と、松川刑事の書きかけた“××のデパートの”という文字が残されていた。しかし、初動で駆けつけた刑事がうっかりメッセージの前半部分を踏み消して、初めの二文字が分からなくなってしまい、警察の捜査は難航する。ふたりの警察葬に沈痛な面持ちで現れた私立探偵の多羅尾伴内片岡千恵蔵さん)は、かつて紳士怪盗と呼ばれた藤村大造だったが、殉職した松川刑事によって『正義と真実の使徒』に改心させられていた。多羅尾は恩人のために捜査を始めるが、デパートというデパートを捜索しても手がかりはつかめず、やがて警察当局も新聞紙上に“迷宮入り”の発表を載せてしまう。


 多羅尾伴内シリーズの第二作。
 娯楽作品として、前作以上に良くできた作品ですね。たいへん面白かったです。
 今回もスリリングなストーリーがテンポよく展開し、またしても多羅尾探偵が、得意の変装を駆使して活躍します。今回は、紳士怪盗・藤村大造が、なぜ『正義と真実の使徒』に改心したのか、そのきっかけが明かされます。
 前作『七つの顔』でもヒロインを務めていた喜多川千鶴さんが、戸川タマキという役で出演なさっています。たいへん御綺麗な方ですね。ヒロインとしては、もう御一方、長島ルリ(奈良光枝さん)が登場します。役としては、奈良光枝さんの方が重要な気はしますが、Wヒロインでいいんでしょうね。
 昔の作品を見ると、当時の街並みや人々の住まい・衣装を始め、人が集まる場所や娯楽などの風俗・習慣が分かります。戦後から復興期の昭和の景色は、一部同時代を生きてきたこともあり、とても心惹かれます。後半の舞台となるユニオンガーデンの店の雰囲気、内装や電飾看板の文字のデザインなど、昭和レトロを堪能できますね。


●監督:松田定次・渡辺實 ●原作:比佐芳武