一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

七つの顔

私的評価★★★★★★★★☆☆

七つの顔 COS-036 [DVD]

 (1946日本)

 東洋劇場の楽屋で発生した火事騒ぎの最中、舞台に出ていた人気歌劇スターの清川みどり(轟夕起子さん)が誘拐され、身に着けていたダイヤのネックレスが奪われるという事件が起こる。みどりのパトロンを気取って彼女に無理やりネックレスを身につけさせていた金田金平(村田宏寿さん)は、盗難の責任をみどりに押し付け、ダイヤの代償としてみどりに身体の関係を迫ろうとした。そこへ多羅尾伴内片岡千恵蔵さん)と名乗る私立探偵が訪れ、事件の解明のため自分を雇うよう、みどりに売り込んできた。みどりの記憶に基づき、伴内はみどりが拉致された家屋を突き止めたが、そこは一昨年亡くなった有名な政治家の私邸で、今は子の野々宮信吾(月形龍之介さん)、早苗(喜多川千鶴さん)の兄妹だけが住んでいた。警察本部の長谷川警部(香川良介さん)は、ダイヤ盗難事件の容疑者として、野々宮信吾を逮捕するが、伴内は他に犯人がいると睨み、とっさに妹の早苗を逃がし、警察から匿う。早苗から事情を聞いた伴内は、得意の変装を駆使して、事件に関わる面々の前に七つの顔を持って現れ、真相を追った…。


 1946年、太平洋戦争からわずか1年ですか。映画の冒頭に本編とは何の関係もなく、『隣り近所 力を合はせて 援けあって 祖國の再建に 邁進しませう』*1と表示されます。そういう時代ですよね。
 主演の片岡千恵蔵さんを私が初めて知ったのは、加藤剛さん主演のテレビ時代劇『大岡越前』の父役でした。戦前は、元々時代劇のスター俳優だったのだそうですが、戦後すぐはGHQの統治下で、日本刀を振り回すチャンバラ映画は戦争を想起させるとして御法度となり、やむなく現代劇にシフトせざるをえなかったようです。私の父から聞いた片岡千恵蔵さんのイメージは、すでに現代劇のヒーローで、本作『七つの顔』の多羅尾伴内や『獄門島』などの金田一耕助を演じていたことを『大岡越前』を見ながら、父から教わったことを思い出します。
 娯楽作品として、たいへん良くできた作品だと思います。
 ストーリー展開のテンポが速く、変装を駆使して探偵がキビキビと活躍します。カーチェイスなども、意外と言っては失礼かも知れませんが、ずいぶんと迫力を感じました。
 小林旭さん主演でリメイクされた『多羅尾伴内』より、スッキリ分かりやすくて、イイです。


●監督:松田定次 ●原作:比佐芳武

*1:DVD版には表示されません。