一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ピースメーカー(The Peacemaker)

私的評価★★★★★★★☆☆☆

ピースメーカー [DVD]

 (1997アメリカ)

 核兵器がどのように扱われ、どのように処分されているのか、そんなことを考えると、不安でたまらなくなります。この映画のプロットは、近い将来起こりうる事件を警告するものなのではないのか?そんな不安を感じます。


 解体された核弾頭を積んだロシアの貨物列車が、核爆発事故を起こします。しかし、核兵器密輸対策チームの女性科学者ジュリア(ニコール・キッドマンさん)は、核弾頭が衝撃に強く、事故で爆発したとは考えにくいことを指摘し、解体された核弾頭が密輸ルートに流されたことを隠蔽するための偽装事故と断定、事件の首謀者を洗い出し、核弾頭の行方を追跡する作業に取りかかります。ロシア事情に詳しい将校として召還された米国防省特殊情報部大佐デヴォー(ジョージ・クルーニーさん)は、ジュリアとともに、盗まれた9発の核弾頭を追って、ウィーン、トルコへと飛び回り、そしてイランとの国境を越えた密輸グループの輸送車を戦闘ヘリで追い詰めました。ところが、回収できた核弾頭は8発、残り1発の核弾頭がひとりの青年によって持ち去られたことが判明します。核弾頭の行方は、内戦で荒廃したサラエボから、ニューヨークへと展開し…。


 世界中を奔走し、テンポよく展開するサスペンスは、骨太でスリリングで、非常に見応えがあります。娯楽作品としても十分、ハラハラ・ドキドキさせられる佳作だと思います。

 しかし、戦争のもたらす悲劇的な側面を、旧ユーゴスラビアの内戦を題材に提示して見せた割りには、結末での思いは複雑です。内戦のために武器を提供したのは誰だ…結局、ニューヨークは無傷でした。アメリカの正義が勝利するエンディングは、すべてのメッセージが消し飛ぶものです。自国の絡んだ戦争を、正当に評価するのは難しいことかもしれませんが、やはり気に入りません。旧ユーゴでの首脳暗殺、ロシアでの核兵器解体と、とても重たい世界の情勢で冒頭を飾っておきながら、結局、辣腕の将校と核兵器の科学者が互いの健闘を称えあう平穏なアメリカの映像で終わっては、「サラエボの悲劇はどうしたんだ!」と叫ばずにはいられなくなります。

 そんなことを考えなければ、星8つくらいあげてもいいくらい作品の出来はいいと思うのですが、気になり始めたら、とことん気になってしまう今日この頃なのでした。

●監督:Mimi Leder ミミ・レダ