一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

櫻の園

私的評価★★★★★★★☆☆☆

櫻の園【HDリマスター版】 [DVD]

 (1990日本)

 うちの職場では、今が桜の散りごろです。この季節になると、不思議と見たくなる映画なんです。

 吉田秋生さんの原作*1は4話からなるオムニバスですが、本作はその4話を“櫻の園”開演2時間前から開演までの間にコンパクトに凝縮しています。余談ですが、吉田秋生さん、ず〜っと“よしだあきお”さん、男性だと思ってました。“よしだあきみ”さん、女性だったんですね。同じく槇村さとるさんも男性だと思ってました。ついでに、主演のひとり、白島靖代さんのこと、ずーっと“しらとりやすよ”さんだと思ってました。いずれも気が付くまでに10数年の歳月を必要としていたのには、我ながら驚きです。余談でした。


 私立櫻花学園の創立記念日は、演劇部の“櫻の園”の上演が伝統行事となっています。その上演を2時間後に控えた朝、部長で優等生の志水由布子(中島ひろ子さん)がパーマをかけた髪で登校してきました。「しっかりした子」と評される由布子の変化にとまどい驚く部員たちでしたが、そこへ3年生の杉山紀子(つみきみほさん)が前夜、喫茶店で他校の生徒と喫煙していたところを補導されたニュースが飛び込み、部員たちの間で、上演中止の噂が立ち始めました。顧問の里美先生(岡本舞さん)が職員会議で懸命な説得をした結果、“櫻の園”の上演中止は回避されましたが、主演のラネフスカヤ夫人を演じる倉田知世子(白島靖代さん)だけが、憂鬱そうな表情を浮かべていました。背が高く、男役がはまり役だった知世子は、初めての女役に自信が持てず、胸のきつい衣装にも気恥ずかしさが先立ち、できればこのまま上演中止になって欲しいと密かに願っていたのです。そんな知世子に心を寄せていた由布子は、知世子を励まし、彼女のためにレースのワンポイントを衣装の胸につけて、胸が目立たないように心を配りました。そんなふたりのやりとりを物陰から紀子が見ていました。紀子は由布子に心を寄せていたのですが、由布子が知世子のことを好きなことも知っていたのです。そして、いよいよ開演の時間が迫ってきました。舞台裏での緊張感の中で紀子がふっと「志水さん、今日は誕生日でしょう?」と由布子に言うと、少女たちの間で小さな声で歌われるハッピーバースデーと共に、開幕のベルが鳴り、無事舞台は始まりました。


 原作を読むと、なんだか映画は別の作品だと思えます。登場人物の印象がかなり違っています。どちらがいい、というのは分かりません。映画は学園の中、主に演劇部の部室を中心にグランドホテル形式で進められます。登場する部員それぞれが、上演前の緊張感の中、生き生きと普通の女子高生を演じているのが好印象です。ただ、この年頃の娘たちが、“同性を好きになる感覚”は、男のボクには分かりません。原作には、女性ならではと思わせる、ハッとさせられるエピソードがいくつかあったんですが、結局知世子と由布子の微妙な関係だけがメインのエピソードとして映画では取り入れられており、ちょっとだけ引いてしまいました。特に知世子と由布子がふたりで写真を撮るシーンは、どうなのかなぁ、と首を傾げながら見ていました。男には謎の世界の話です。

 いろいろドタバタして、ようやく開演というところで、映画は終わります。舞台の幕開けの映像は、緊張感をみなぎらせ、同時にホッとさせられ、思わず息をついてしまいます。とてもさわやかなエンディングですね。

 煙草、なんかを象徴してるんですかね? 冒頭で、2年生の城丸香織(宮澤美保さん)が大学生の彼・島田祐介(三上祐一さん)から取り上げたタバコとジッポー由布子の手に渡り、由布子が屋上で喫おうとして、その後紀子の手に渡り、紀子は2回に渡り喫おうとして2回目で喫って、開演前に香織に預ける(返す)という、一連の話が、実はDVDのチャプターに「煙草〜○○が△△する」という風に切ってあったので、なんか意味ありげだな、と。よく分かりません。とりあえず、島田祐介の役どころは、ものすごく自己中心的で軽くふざけてるよな、と、同性としてムカつきます。映画としては、どーでもいいところなんですけど。

 おまけの予告編、本編にない映像が多く入ってます。おそらく予告編のためだけに撮った映像だと思います。力入ってますね。

 テーマ曲は、ショパンですか? 太田胃散のCMを思い出すのは寂しいですね。

●監督:中原俊 ●原作:吉田秋生(コミック「櫻の園」)

*1:今は文庫でしか手に入らないんですね。ボクは単行本で持ってます。

櫻の園 白泉社文庫

櫻の園 白泉社文庫