一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

トリック 劇場版

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

トリック -劇場版- 超完全版 [DVD]

 (2002日本)

 自称売れっ子天才奇術師の「山田奈緒子仲間由紀恵さん)は貧乳だぁ」と、自称天才物理学者で日本科学技術大学(滑舌悪いと噛むぞ)教授の「上田次郎阿部寛さん)は巨根だぁ」という、品のないふたりが超常現象を、まるっと解き明かすTVドラマシリーズの劇場版です。


 ある日、奈緒子は300年毎に災いが起こると言い伝えられる糸節村から来た、村の青年団の団長・神崎明夫(山下真司さん)と副団長・南川悦子(芳本美代子さん)に、「村で神を演じてほしい」と依頼されました。ところが、村に着いてみると、すでに3人の“神”を名乗る男たちが待っていたのです。ホンモノの神を探し当てるため、村長は4人の対決を命じ、4人のトリック合戦が始まりました。


 前半は“神”を演じる竹中直人さん、ベンガルさん、石橋蓮司さんの個性派俳優たちがトリック合戦を繰り広げますが、敗れた神はみんな不可解な死を遂げます。でも、死が死と受け取れないほどあっさりとストーリーの中に埋もれていきます。

 後半は、奈緒子が出逢った謎の少女の物語が語られ、まったく別のストーリーが展開するようにも見えます。神崎が壮絶な死を遂げ、やがて山火事が発生し、とても後味の悪いストーリーなのに…そう、これが堤幸彦監督の味なのでしょうか? 全編ギャグ満載のため、とってもシリアスで後味悪いストーリーが、いつのまにか奈緒子と上田の夫婦漫才に化けているという、なんともはや、な本作です。

 肝心な超常現象(300年に1度亀が動く?)がボヤけていて、一体何が不思議だったのか分かりませんでした。代わりに“泣き鬼と笑い鬼を当てる”イベントでかなりマニアックな論理パズルを提示して見せたり(結局観客に簡単に理解させられないと観念したのか、奈緒子に「笑い鬼の方が1個多かったから確率的に笑い鬼である可能性が高い」、という一言で納得させようとしたのは笑った)、糸を使った図形の受け渡しや暗号での会話のやりとりなど、奈緒子と上田のふたりだけで謎を提示して解くようなシーンが多々見られ、ちょっとTVシリーズとは趣向が違うようでした。暗号を別の意味に誤解させるために“シスラナ”という植物を造語してしまうあたりは、力技を感じましたが、ふたりの微妙な関係を理解させるための、微笑ましいエピソードになっていました。

 このあとTVシリーズは3rdシーズンを迎えましたが、ここでついにネタが尽きたのか、その後放映はありません。まぁ、そろそろ飽きた、という気もしますが、同じ時間帯に今年の冬放送された堤組の“富豪刑事”は物足りませんでした。基本が一話完結型の速攻勝負だったせいでしょうかね。

 ということで、4thシーズンは、あるのかないのか? ま、ないんだろうなぁ。シーズンを閉じるネタがもうだいぶ煮詰まった感じだし、あと続けるとトリックの世界観が破綻しそうな予感もするし。ケイゾクみたいに時空を無視したようなブッ飛んだ設定がないだけに、これ以上シリーズで続けるのは辛いだろうなぁ。単発の映画やテレビ特番ならまだまだイケそうな気もするけど、視聴者がそれで満足できるかどうか…。たぶん、このままうやむやのまま終わってまうことでしょう。

●監督:堤幸彦 ●脚本:蒔田光治