一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

約三十の嘘

私的評価★★★★★★★★☆☆

約三十の嘘 特別版 [DVD]

 (2004日本)

 大阪発札幌行きの豪華寝台特急トワイライト・エクスプレスに6人の詐欺師が乗り込みました。3年前のある事件をきっかけに、グループとしての仕事はやめていたのですが、久津内守(田辺誠一さん)の呼びかけで、当時のリーダーだった志方大介(椎名桔平さん)を始め、宝田真智子(中谷美紀さん)、佐々木健二(妻夫木聡さん)、新たに真智子の今の相棒・横山宏紀(八嶋智人さん)、そして3年前の事件のカギを握る今井優子伴杏里さん)が集まって、札幌で一仕事することになっていました。3年前の事件以来、カリスマ的な輝きを失った志方に何かと佐々木が突っかけ、その事件で一役買った優子がメンバーに加わったことでメンバーの関係がギクシャクしますが、札幌での仕事はうまく運び、帰りのトワイライト・エクスプレスでは、7000万円入りのトランクを囲む6人の姿がありました。ところが、その大金の入ったトランクが、忽然と紛失してしまい…。


 詐欺師6人が、トワイライト・エクスプレスという走る密室を舞台に繰り広げる、騙し騙されのコンゲームかと思って見ていたら、なんとなく違う雰囲気が…実は、ちょっと切ないラブ・ロマンスだったのでした。トランクの行方が気になりつつも、一番気になるのは、6人の間に絡まる人間関係。誰と誰が組んでいて、誰と誰が恋愛関係にあるのか。3年前の事件をきっかけにこじれた人間関係を解きほぐすこと、それこそがこの映画の主題だったりします。「欲しいのはお金じゃないのかもしれない」というセリフに、クリミナル・サスペンスではない、人間ドラマの暖かさを感じてしまいました。

 元々舞台劇のようで、シナリオがとてもしっかりしているのでしょう。のっけからストーリーにグイグイと引き込まれていきます。ほぼ6人の会話のみで進められますが、芸達者な方々が揃っているので、見ていて飽きさせません。むしろ6人のキャラがしっかり確立されているので、それぞれの表情や仕草などが気になって、そこから窺える心の動きに思いをめぐらせるうちに、あっという間に100分という時間が過ぎていく感じです。

 メンバーの中でひとりプロの詐欺師に徹したかに見えた人物が、逃走中にほろりと流してしまった涙にも、救われた気分になること請け合い。ストーリーの結末もオシャレで、見終わったあと舞台に向けて拍手を送りたくなるような、そんな気持ちになります。

 クレイジーケンバンドの音楽が渋くていいです。作品の雰囲気にすごくハマッてて、カッコよかったです。

●監督:大谷健太郎 ●原作:土田英生(舞台「約三十の嘘」) ●音楽:クレイジーケンバンド