一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

鉄人28号

私的評価★★★★★★★★☆☆

鉄人28号 デラックス版 [DVD]

 (2004日本)

 小学6年生の金田正太郎池松壮亮さん)は、幼いころに亡くした科学者の父・正一郎(阿部寛さん)の夢を繰り返し見るようになりました。夢の中で父は、幼かった正太郎を突き飛ばし、そのままどこかへ消えてしまうのです。正太郎は父に愛されていなかった、という思いを募らせます。そんなある日、東京にブラックオックスという黒いロボットが現れ、東京タワーを破壊し、正太郎の母(薬師丸ひろ子さん)も脚を骨折する重傷を負ってしまいました。正太郎は父の知り合いという綾部(中村嘉葎雄さん)に電話で呼び出されると、父と祖父が開発したロボット・鉄人28号を操縦し、ブラックオックスと闘うことになります。


 ストーリーは、正太郎少年を取り巻く親子愛と彼の成長物語といったところでしょうか。特撮映画ですが、ドラマ作りにかなり重点を置いている感じがします。監督の演出で、正太郎が心を動かして行動していく様を、丁寧に描いているような印象を受けました。正太郎役の池松さんの、表情を見ているだけでもかなりドキッとさせられる場面があります。気弱で不安だらけだった正太郎が、勇気を持って立ち上がっていく様を、気負わず、うまく演じていますね。相棒の天才少女科学者役の蒼井優さんも、かなり雰囲気持ってて、いい感じです。単にかわいいだけの美少女キャラでなく、科学者としてキレる雰囲気をキビキビと演じたり、ときに少女としての不安定さをチラつかせたり、かなり画の中で輝いて見えました。なんと言っても笑顔がステキです。

 原作は昭和30年代の日本ですが、本作では時代設定を現代に置き換えています。その中で、昭和の匂いを画面にふんだんに織り込むべく、いろいろな場面でありえない背景や衣装が登場したりします。例えば警察。捜査課の部屋の中は、いかにも木造っぽく、衝立やロッカー類なども木製だったりします。警察官、特に柄本明さんの衣装などはかなりレトロですし、刑事の中澤裕子さんの髪型などはモガを連想させるおかっぱスタイルです。また、岡山県の犬島でロケが行われた、鉄人のレンガ作りの格納庫などは、かなり古い工房の雰囲気です。ここで鉄人の再生に携わる職人たちを描くシーンには、高度成長期を支えた人々へのリスペクトさえ感じられます。

 鉄人とブラックオックスの闘いは、モーションキャプチャを使った、すべてハリウッド的なCGアニメです。CGに実景とミニチュアを微妙に加えながら、構成されています。がんばってはいますが、現段階での精一杯なのかな、という感じで、やはり、背景に置かれたモノの微妙な質感や、重量感のない動きが見えたりする部分などで、不満は残ります。それでも、日本のCG特撮作品にしては、実写部分との合成において、割と自然な色合いが保たれていて、好感が持てました。

 エンドクレジットの最後に、新たに録り直されたアニメの主題歌が流れます。この辺も昭和レトロですね。

●監督:冨樫森 ●原作:横山光輝(コミック「鉄人28号」) ●音楽:千住明