ハーケンクロイツの翼
私的評価★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
(2003日本)
買うんじゃなかった…。
ボクの嫌いなタランティーノ路線の映画でした。
どっかのサイトの紹介で、“アクション、ラブロマンス、コメディを〜”という売り文句が並んでいたので、だいぶ考えた末、「コメディなら見てみるか」とようやく買ったのに、残念ながら作品全体の持つ出口の見えない暴力の連鎖と絶望感で、クスリとも笑えませんでした。とにかく全編悪さをしては暴力に晒され、傷だらけになってしまう、救いようのない展開です。
あらすじを書くのが大儀なくらい、後悔してます。なんか小栗旬さん扮するRIKUOが自暴自棄に思いつくままに仲間と悪事を働き、しまいには刑務所に入って…んな映画です。仲間は“付き合う男を不幸にする女”というレッテルを貼られたNAMIKO(伴杏里さん)と、奔放に周りの人間に突っかかっていく少年GAS(山根和馬さん)、おまけで山田(宮本武士さん)というちょっと勉強ができる悪い子がついてきますが、あくまでおまけ。ふだんはRIKUOとGASのふたりでつるんで悪さをし、NAMIKOが間に入っている感じ。
世の中はすべてインチキなんだ、と思わせるこの映画に、“いい人”も“よい子”も出てはきません。暴走の果てに見出すのは希望か絶望か、それは見る人の心次第とはいえ、暴走する彼らにスカッとするようなカタルシスが感じられないくらいに、いい人の仮面をかぶった人々があまりにも“フツー”すぎます。フツーすぎて、彼らに自分が殴られてるような気分になるのかもしれません。だから重苦しい。
話の作りも粗いので、なんでRIKUOがそんな悪さをする人間になったのか、あまりピンときません。「感性で分かれ!」ということなのでしょう。しかし、自分は悪さをする子の心理に感情移入できる人ではないので、結局、最後までRIKUOのやり方に感性を揺すぶられることなく、ひたすら冷めた目で見てしまいました。ま、小栗さんはカッコよかったっちゃあ、カッコよかったんですけどね(GASを始め、ダイコンが豊作な感じはしましたが…)。
AMAZONのレビュー欄に掲載されている“DVD NAVIGATOR”データベースの内容紹介によると、最後にRIKUOは「生きる意志に目覚めていく」ことになるみたいなのですが、小栗さんの前向きと思わせるセリフとは裏腹に、ボクにはまったく希望が見出せませんでした。結局同じことを繰り返して落ちていくだけなんじゃないか、そんな気がしてしまいました。見終わったあとに、アメリカン・ニューシネマ的な無力感さえ感じてしまいました。それほどのモンじゃなかったですけど…。
中盤、登場人物に合わせて動くカメラがひどい手ぶれで(狙ってるのなら犯罪だ!)、お父さんが初めて運動会をビデオに撮って、大失敗した映像を見せられたような気がしました。それも延々続くので、やはり狙っての映像なのかも…たまらん! それも含めて、全体的に映像の作りが粗い感じ。当然狙った上で粗いようなのですが、粗さ=荒々しさだということなら、見てられません。いい悪いは分かりませんが、好きではありません。
いろんな意味で辛い映画でしたが、テーマ的に考えさせる要素がないワケではないので、星1つだけつけときます。
●監督:片嶋一貴
※買ったのはこっちのジャケットの方でした。