一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

亡国のイージス

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

亡国のイージス [DVD]

 (2005日本)

 ギリシア語の“無敵の盾”を意味するイージスの名を持つ護衛艦いそかぜ”で、海上訓練の最中に新入りの如月(勝地涼さん)が船倉で爆弾を仕掛けて立てこもり、乗員全員の離艦を要求してきました。副長の宮津寺尾聰さん)は、服務指導を行う先任伍長の仙石(真田広之さん)に、海上訓練の指導員として乗り込んだ溝口3佐(中井貴一さん)が、実は防衛庁情報局(DAIS)が送り込んだ調査員であること、そして某国の対日工作員オ・ヨンファが、沖縄米軍基地から奪った化学兵器“GUSOH(グソー)”を密かに“いそかぜ”に持ち込ませ、テロを企んでいること、如月がオ・ヨンファによって潜入させられたスパイであり、すでに艦長が暗殺されたこと、を告げます。仙石は如月を説得するため、非常用のルートから船倉に乗り込みますが、如月は、自分こそがDAISから送られた諜報員であり、“いそかぜ”に反乱の動きがあったら艦を爆発してでも阻止するよう命じられていることを告白しました。半信半疑だった仙石が船倉の錠を外したところ、爆弾の一部が爆発し、船倉になだれ込んだ乗員によって如月は取り押さえられます。爆弾により艦底に穴が開いたことを理由に、宮津は幹部以外の総員離艦を命じました。仙石も一端はボートに乗り込みますが、如月のことが気にかかり、海に飛び込むと、艦底に開いた穴から密かに帰艦。そして、幹部と溝口たちが残った“いそかぜ”の全ミサイルが、東京都心に照準をセットされ、宮津は政府に要求を突きつけてきました…。


 おもしろい…といえば、おもしろい…かな? ビミョー…。

 というのも、同じ福井晴敏さんの原作の映画化で、ローレライの方は、「あ、こりゃファンタジーだ」と割り切れたんで、エンターテインメントとして楽しめたワケですが、本作は、どっちなの? エンターテインメントとすれば、もっとイージス艦の凄さを全面的に押し出して映像で見せて欲しかったし、何より、東京が本当に壊滅の危機にさらされているという緊迫感を見せて欲しかった、という不満が残ります。ポリティカル・サスペンスとすれば、政府の対応に切迫感がなく、結局国民に対してうまく言い訳かませるかどうか、そういう観点での解決方法を模索しているとしか思えない平和ボケ具合だとか、有事の非常事態下で、仙石伍長の浪花節で事を解決しようという甘ったるい平和主義的解決方法(そのおかげで○○は撃たれてしまったじゃないか!)だとか、観ていて、少しでも立ち止まって考えてしまうと、非常に疲れるものがあります。宮津副長の反乱の意図は、結局のところナショナリズムに駆られたモノだったのか、私怨だったのか、よく分かんなかったぞ!…あぁ、なんだか、どっちつかず…思想が見えるような見えないような。現場の対応と、政府の対応と、両方平等に見せてやるから、観ているおまえらが考えな、ということなのでしょうか? いっそ、どっちかに力点移して、もっとグイグイ引っ張って見せて欲しかった気がするのですが。

 一番期待を裏切られたのは、首都を攻撃されるという衝撃的な映像を見せてもらえなかったことですかね? どうせ絵空事なら、そこまでやられて、観る者の危機感を煽って欲しかったです。って、そんな思想もないのか? やっぱりエンターテインメントに力点置いてたんだな。それならスティーブン・セガールじゃないけど、船を下りたら子煩悩でヘタな絵描きの父親、でも仕事じゃ目の前の危機的状況にひとりで立ち向かう骨太な男、みたいな仙石伍長を全面に押し出した方が、分かりやすいよなぁ。佐藤浩市さんたちDAISの面々、本作の中の立場は、間抜けだろうが…ねぇ?

 とはいえ、出演者が主役級の芸達者たちばかりなため、結局一気に観せられてしまうという引力を持ってるんですよね。困った作品だ。

●監督:阪本順治 ●原作:福井晴敏(小説「亡国のイージス」)