一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

帰郷

私的評価★★★★★★★★☆☆

帰郷
帰郷 特別篇 [DVD]

 (2004日本)

 東京で一人暮らしをしながら働く晴男(西島秀俊さん)が、突然再婚することになった母(吉行和子さん)の結婚式のため帰郷しました。その夜、知り合いの居酒屋で飲んでいた晴男は、そこでバイトをしていた深雪(片岡礼子さん)に出くわします。深雪は8年前に晴男と一度だけ男女の関係を持ったあと、突然彼の前から姿を消してしまい、最近になって娘を連れてこの町に戻ってきていたのでした。想い続けた憧れの女性との再会に胸をときめかせた晴男は、店がハネたあと、再び深雪と関係を持ってしまいます。帰り道、深雪は娘について「今7歳。名前はチハル、晴男の“ハル”。目なんか晴男にそっくり」と晴男に語り、「明日会わせたいから家に来て」と告げて別れました。次の日彼女の住む町営住宅に出向くと、深雪は不在で、晴男がドアの前で立ちすくんでいたところ、チハル(守山玲愛さん)が「なんですか?」と声をかけてきました。深雪は再び、晴男の前から姿を消してしまいました…。


 たった半日ほどの母親探しの旅で、親子のように絆を深めていく晴男とチハルのプチ・ロードムービーです。

 たぶん、晴男は、どーしよーもないほど、“イイひと”なのです。突然再婚し、娘のようにはしゃぐ母親に振り回され、娘を残して消える昔の女に振り回され、7歳の女の子にまで振り回され、それでも、母親にも、深雪にも、チハルにも真摯に“責任”を負おうとするその姿勢、なんだかとても切ない気分にさせられます。たぶん、深雪は、8年経っても変わらない、そんな晴男に嫉妬を覚えてしまったのではないでしょうか? ほんの少し、彼を困らせてみたくなったのかもしれません。

 子役って、イヤだなぁ、と、ときどき思います。守山玲愛さん、素で子どもっぽい仕草や表情を“演技”してみせるところが、嫌味ですらあります。でも、そんな彼女のうまさに完全に心奪われて、しんみりしたり大笑いしたり…おとなってバカですよねぇ。決して美少女タイプの子ではありませんが、フツーにかわいい子どもとして、観る人のハートを鷲掴みにしちゃうようなイタイケな子です。娘、欲しくなりました。

 最初子どもとの接し方がぎこちなかった晴男が、次第に父親っぽくなっていくところがイイですよねぇ。それに連れて、晴男に心を開いて無邪気にふるまうチハルもいじらしい。なんだかホンモノの親子を見ているみたいで、ほのぼのとしてしまいます。

 エンディングをして、ボクの父は「思わせぶり、というやつよ」と言いました。表面上は、ほろ苦さを感じつつも、「これからがほんとうの始まりなんだ」という晴男のセリフを深雪が、そして観ているボクらが、どう思うか、ということです。人生甘えん坊のボクは、淡い期待を抱きました。それでイイんじゃない?

 これ、やさしい気持ちになりたいとき、繰り返し見ちゃうと思うな。

●監督:萩生田宏治 ●脚本:萩生田宏治利重剛