若おかみは小学生！

私的評価★★★★★★★★★☆

　（2018日本）

　交通事故で両親を亡くした小学6年生の〝おっこ〟こと関織子（声：小林星蘭さん）は、温泉旅館・春の屋を営む祖母の関峰子（声：一龍斎春水さん）に引き取られる。旅館にはユーレイの〝ウリ坊〟（声：松田颯水さん）が居ついており、なぜかおっこにだけその姿が見えてしまう。おっこはウリ坊のたっての頼みを聞き入れ、旅館の若おかみを引き受けることになってしまうが、お客様を怒らせたり、やる気が空回りしたり、失敗ばかり重ねてしまい、ライバル旅館の跡取り娘で、同級生の〝ピンふり〟こと秋野真月（声：水樹奈々さん）と衝突したときには『若おかみじゃなくてバカおかみなんじゃないの？』と揶揄されてしまう始末。しかし、おっこは持ち前の明るさと頑張り、そして祖母の峰子や旅館の人たち、ウリ坊を始めおっこにだけ見えるユーレイや魔物たちに支えられ、若おかみ修業を続ける。やがて、少しずつお客様の喜ぶ顔や感謝の言葉に励まされ、信頼される若おかみへと成長していくおっこだったが……。
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　うん。キャラの瞳がちょっと落ち着かないんだけど、雰囲気はジブリっぽくて、安心して観ていられるアニメです。
　背景画が柔らかくて、例えば最近の新海誠さんの作品みたいに、実写かと見まがうばかりにガッツリと背景を描き込んでなくて、なんか穏やかな気分にさせられます。

　それにしても、冒頭の事故のシーンは衝撃的でした。ブラックアウトしても、ちょっと胸がしばらくバクバクいってしまうカンジで怖かったです。
　そんな衝撃的な事故に遭いながら、一人だけ助かった小学生の女の子の成長物語、いかに？
　あれ？　なんか知らない少年が、空に浮かんでるんですけど……彼が、ウリ坊かぁ。

　最初は、鄙びた温泉旅館を無理やり継がそうとさせるウリ坊の企みが、なんか古い世襲制みたいな時代遅れな因習を押し付けられてるみたいでげんなりしたんだけど、そこ、ツッコむところじゃなかったです^^;
　おっこは、あっけらかんと状況を受け入れ、自主的に若おかみになろうと奮闘し始めました。

　この映画のノリとしては、全体的に言えば、ゆったりと流れる時間の中で進むお話なんですが、ときおりゴチャゴチャと画面を目まぐるしくかき回すような展開も見られます。
　例えば、ユーレイやら子鬼の魔物やらが登場して、なんじゃこれ？みたいに画面を縦横無尽にかき回して驚かされますが、その辺も軽くファンタジーだねって割り切っちゃえば、そのうち、フツーに受け入れられるようになりますwww　また、お客様の占い師のお姉さんと、豪快なショッピングを楽しむシーンは、アップテンポなノリで痛快でした。

　で、いろいろとクセの強いお客様と接するうちに、おっこは若おかみとして少しずつ成長していくんですが、最後に胸を割かれるようなツラいエピソードが待ち受けていました。しかし、このエピソードこそが、この作品のオリジナリティを際立たせているところであり、ついつい、ほろほろと涙あふれてしまいながらも、おっこの若おかみとしての確実な成長と、両親を失ったことを心から受け止めて自立し始めたことを実感させられる、とっても大切なシーンだったのです。

　子ども向けの作品だと思って侮っていたら、すっかり感動の涙に胸震わせてしまい、自分の不遜さを悔やむことになりました。
　とてもステキな作品でした。

※この作品以来の監督作品だそうです。
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●監督・絵コンテ・演出：高坂希太郎　●脚本：吉田玲子　●原作：令丈ヒロ子（作）／亜沙美（絵）（児童文学『若おかみは小学生!』シリーズ／講談社青い鳥文庫刊）