一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

仮面ライダー THE FIRST

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

仮面ライダー THE FIRST [DVD]

 (2005日本)

 将来を嘱望される科学者の本郷猛(黄川田将也さん)は、ある日、悪の秘密結社ショッカーに拉致され、バッタの能力を持つ改造人間ホッパーとして生まれ変わり、ショッカーの手先として悪事を重ねます。ところが、ある出来事から自我を取り戻した本郷は、ショッカーの怪人スパイダーに殺された矢野(高野八誠さん・二役)の亡骸の前に呆然と佇み、深い自責の念に駆られました。矢野の婚約者で雑誌記者の緑川あすか(小嶺麗奈さん)は、本郷が矢野を殺した犯人だと思い込み、彼に憎悪の炎を燃やします。あすかに責められ、言い訳をできずにいた本郷は、仮面をつけ、素性を隠して、密かにあすかをショッカーの魔手から守ることを決意しました。そこへ、死んだ矢野と瓜二つの男・一文字隼人(高野八誠さん・二役)が現れ、あすかに言い寄ってきます。彼の正体は、裏切り者・本郷を抹殺するためにショッカーが放った刺客・第2のホッパーでした。彼は本郷の前に立ちはだかり、「貴様を殺し、あすかを俺のものにする」と宣言すると、ホッパーに変身し、本郷に戦いを挑んできました…。


 劇中、どこにも『仮面ライダー』という表現は出てきません。ましてや『1号』も『2号』もありません。自らマスクをかぶって改造人間に変身するという設定は、原作どおりなんだそうです。なので、『変身』というキメ台詞もないし、キメのポーズもありません(いや、キメのポーズは厳密にはあるんだが、変身のポーズというワケではない、とゆーことです)。でも、仮面ライダーなのです。

 2005年はウルトラマン仮面ライダーも『原点回帰』の年だったそうです。ウルトラマンは、テレビ・シリーズ『ウルトラマンマックス』で、久々にM78星雲から来た光の巨人という設定を取り戻し、初代ウルトラマンウルトラセブンでおなじみの怪獣や宇宙人まで登場させるおまけが付いていました。仮面ライダーは本作が原点回帰の一作なワケですが、こちらは元々オリジナル・ビデオとして撮り下ろす予定が、急遽劇場公開となったようです。テレビ・シリーズで夏休みの子供向け映画として上映される仮面ライダーは、戦隊モノと抱き合わせのため、けっこう短い尺ですが、本作は単独上映作として、90分の尺になってます。

 テレビ・シリーズをリアルタイムで見たボクにとっては、いきなりテレビ・シリーズの主題歌を持ってきて気分を盛り上げてもらい、また、デジタル編集で故・天本英世さん演じる死神博士が登場したのは、とてつもなくうれしい仕掛けだったのですが、映画としては、ちょっとまとまりに欠けているなという印象を持ちました。90分に収めるため、おそろしくストーリーをぶつ切りにショートカットして無理やりつなぎ合わせた感じで、どうも釈然としないつなぎが何箇所も散見されたのです。怪人を追跡していた次の画面ではいきなり昼から夜に変わってた、とか、一文字隼人は改造の拒絶反応のために定期的に血を入れ替えないといけなかったはずなのに、ショッカーから追われるようになって以降、なんとなくその問題が無視されてストーリーが突っ走ってしまってる、とか。

 ぶつ切りと言えば、ウエンツ瑛士くんと小林涼子さん(パイオニアのスグレコのCMでパラパラ踊ってる『ミカちゃん』ですぞ。かわいいなぁ…#^^#)のエピソードは、どう絡んでくるんだろうとヤキモキして見てたら、あぁ、ひどい扱い! それはないだろう、長石監督! テレビ・シリーズで言えば、完全に本郷猛と一文字隼人のエピソードとは別の回に語られるエピソードだし、もっとドラマティックに描かれてしかるべきお話だと思うのに、せっかくたっぷりとイントロダクションを仕込んでおきながら、ひどく小さな扱いで終わらされて、かわいそうとしか言いようがありませんがな。こんな部分も含めて、もしかして、ディレクターズ・カット完全版が発売されるんではないかと、そんな気がしています(テレビ・シリーズの劇場公開版は必ずあとからディレクターズ・カット版DVDを発売してるからな)。

 仮面ライダークウガで、とても激しいバイク・アクションを堪能してしまったせいか、本作のバイク・アクションは、ちょっと物足りなかったです。いいところでVFXにつながってしまい、『あぁ、もうちょっとバイク同士の絡みを見せてくれよぉ』と言った感じです。ま、それでも全然ダメってワケじゃあないんだけどね。

 ついでにおまけ。ホッパーが自我を取り戻す件が、非常にクサい。子供だましかい!とツッコミ入れたくなる甘さ。まぁ、本郷猛の純粋さを表すエピソードなんだろうけど、呆気にとられましたよん。

 いろいろ文句をつけつつ、ま、仮面ライダーの造形が素晴らしかったので、ちょっと評価UPしときます。

 おっと、忘れるところでした。立花藤兵衛は仮面ライダーV3宮内洋さんでした。藤岡弘、さんでなくて良かった。あの人最近『濃ゆい役』ばっかなんだもん。

●監督:長石多可男 ●脚本:井上敏樹