一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

宇宙大怪獣ドゴラ

私的評価★★★★★★★★★☆

宇宙大怪獣ドゴラ [DVD]

 (1964日本)

 日本上空でTV衛星が次々と消息を絶つ事故が発生しました。一方地上では、世界中の宝石店でダイヤモンドが盗まれる事件が続発していました。ある日夜更けの宝石店に組織的な宝石強盗の一団が押し込み、金庫を焼ききろうとしていたところ、光るアメーバのような謎の生物が現れ、強盗団を追い払ってしまいます。そのころ、警視庁の駒井刑事(夏木陽介さん)が、国際的な宝石強盗団の一味と目していたマーク・ジャクスン(ダン・ユマさん)を追いかけて、人造ダイヤの研究をしている宗方博士(中村伸郎さん)の屋敷を訪れました。まんまとマークに逃げられた駒井は、博士の秘書の昌代(藤山陽子さん)をアパートに送っていきますが、そこでTV衛星消失事件にかかわったと見られる謎の宇宙生命体が、町工場の石炭置き場上空を襲い、石炭を空高く巻き上げるのを目撃します。やがて電波研究所に勤務する昌代の兄・桐野技官(小泉博さん)が宗方博士の元を訪れ、宇宙生命体の正体が放射能で突然変異した宇宙細胞だと判明しますが、宇宙生命体は次々と世界中の炭鉱やダイヤモンド鉱山を襲い始め、世界的な脅威となってきました。


 ストーリーは、宝石店でドゴラに追いやられた強盗団の一味が、ダイヤモンドの原石を狙って次々と強奪事件を繰り返し、その都度マークやドゴラの登場で邪魔されるという展開で、最後にはマークがすり替えたダイヤの原石を持って北九州へ行ったのを追いかけて、ドゴラも北九州の炭鉱に現れて、そこですべての決着がつくというものです。

 宝石強盗団と謎の男マーク、そして駒井ら警視庁の刑事たちの人間の事件の部分が、案外とおまけ的でなく、しっかりと描かれているのがすばらしいですね。変な外人と予告編のキャプションに入っていたマークのとぼけた演技も狂言回しにふさわしく、ミステリ的な要素をコンパクトに挿入した脚本(原作?)は面白かったです。また、マークと駒井のやりとりがなかなかオシャレで、細かなところで、思わずフフッと微笑んでしまうような味わいがあります。

 で、特撮班のお仕事ですが、これがまた実に力作です。CG全盛の現代なら安易に(?)CGで逃げてしまうクラゲのような不定形生命体ドゴラは、着ぐるみでない怪獣であるため、当時としてはかなり難しい撮影だったと思うのですが、チープさを見せずにみごとに命を吹き込んで見せています。軟体生物的なふにゃふにゃした感じを撮影するため、巨大な水槽の中に漂わせて撮影したそうですが、おそらく今同じことをしようとしても、当時と変わらず難しい撮影になると思います。この撮影のアイディアにはまったく頭が下がります。当時の円谷英二さん以下特撮スタッフの、心意気を感じさせてくれます。

●監督:本多猪四郎 ●特技監督円谷英二 ●音楽:伊福部昭 ●原作:丘美丈二郎(小説「スペース・モンス」)