一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

配達されない三通の手紙

私的評価★★★★★★★☆☆☆

あの頃映画 「配達されない三通の手紙」 [DVD]

 (1979日本)

 ボブことロバート・フジクラ蟇目良さん)が、叔父の唐沢光政(佐分利信さん)を訪ねてアメリカから山口の萩にやってきました。ボブはシカゴの大学で東洋史を専攻しており、祖母の祖国である日本の文化を研究するため来日したのです。唐沢家は萩の名士で、光政は地元の銀行の頭取、長女・麗子(小川真由美さん)、次女・紀子(栗原小巻さん)、3女・恵子(神崎愛さん)の3人の娘がいました。ボブは唐沢家の離れに居候し、3女の恵子が何かと世話を焼くことになります。次女の紀子は3年前、婚約者の藤村敏行(片岡孝夫さん)が突然失踪して以来、魂が抜けたような生活を送っていました。ところがボブが居候を始めてまもなく、藤村が突然舞い戻ってきたのです。光政は激怒しましたが、紀子の懇願に折れ、藤村が光政の銀行に勤めることを条件に2人の結婚を了承しました。藤村夫妻が新婚旅行から戻ってきて数日後、藤村の妹・智子(松坂慶子さん)が唐沢家を訪ねてきます。2人の結婚式にも呼ばれなかった妹の来訪を、藤村は明らかに嫌っているようでした。智子が藤村たちの離れの一室に居候を始めてまもなく、藤村の荷物を整理していた紀子が、本の間に挟んであった3通の手紙を発見します。手紙は藤村が妹に宛てたものと思われましたが、封印もされておらず、何よりその内容が謎でした。日付は8月11日、8月20日、そして9月1日という未来の日付で、それぞれ「妻が病気になったこと」「妻が重態に陥ったこと」そして「妻が亡くなったこと」を予告するものでした。そして8月11日、手紙の予告どおり、紀子が突然倒れてしまったのです。


 原作はエラリー・クィーンのミステリー小説「災厄の町』なのだそうです。ボクは読んでいません。あらすじで挙げたここまでの内容は、サスペンスに満ちたものでしたが、ふつうに見ていても犯罪の可能性がピンポイントで「ここしかない」と分かってしまい、あとは芋づる式に先が読めてしまいました。ミステリとしては、3通の手紙という大きな謎を提示した割りに、弱いといえます。しかし、ミステリを楽しむなら、小説を読んだ方がいいのかもしれません。東宝の市川監督の金田一耕助シリーズと同じく、ミステリとしてよりも、人間ドラマとしての部分を楽しむべき作品だと思います。

 次女役の栗原小巻さんの演技に、強烈に魅入られてしまいました。あとの役者さんも豪華な顔ぶれには違いないのですが、彼女の女優魂みたいなモンを見せつけられると、なんだかほかのキャストが色あせて見えるように思いました。

 ボクは興味ありませんでしたが、熟年世代のファンにはうれしいサービス(?) 、松坂慶子さんの美尻、シャワー室での後姿が拝めます。こういうシーンがあると、週刊誌が前振りで騒ぎますよねぇ。たいてい拍子抜けなんですけど。

●監督:野村芳太郎 ●脚本:新藤兼人 ●原作:エラリー・クイーン(小説「災厄の町」) ●音楽:芥川也寸志