一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

NIN × NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE

私的評価★★★★★★★★★☆

NIN × NIN 忍者ハットリくん THE MOVIE プレミアム・エディション [DVD]

 (2004日本)

 伊賀の山奥で修行を重ねていた忍者・服部カンゾウ香取慎吾さん)は、父・服部ジンゾウ(伊東四郎さん)から、江戸(=現代の東京)に出かけ、そこで最初に出会った人物に仕え、その主を命を賭けて守る、という最後の修行を命じられました。そして任務遂行に当たっては、主以外に自分の姿を見られてはならないという忍者の掟を必ず守ること、掟を破った場合はただちに修行を中断して伊賀に戻り、破門を覚悟すること、という条件をつけられます。東京に出たカンゾウは、小学3年生のケンイチ少年(知念侑李さん)を主と定め、修行を開始しますが、東京では、伊賀者の宿敵・甲賀の抜け忍を狙う刺客が暗躍する事件が続発していました。そこへケンイチ少年のクラスに産休代理教師の佐藤先生(ゴリさん)が赴任してきて、忍法のような不思議な力で子どもたちを驚かせます。やがて佐藤先生が、カンゾウのかつてのライバル・甲賀忍者ケムマキであることが判明し、カンゾウは事件のことをケムマキに問い詰めますが、抜け忍となった彼には関係のないことだと突っぱねられました。そして、ふとしたことから事件の犯人を目撃してしまったケンイチに魔の手が迫り、カンゾウは重大なピンチに陥ります…。


 映像はスタイリッシュ、ストーリーは分かりやすい勧善懲悪時代劇+正統派ジュブナイル、こなれた笑いをとるコメディと感動的なエピソードをバランスよく交えた、ファミリー映画の快作、といった感じです。

 ケンイチとの出会いのエピソードで、カンゾウが腹を空かせてケンイチに飯をお願いする件、その絶妙な繰り返しの間合いは、ショムニなどを手がけた鈴木監督の、コントの演出のツボを押さえたうまさを感じずにはいられません。全般に、笑いをとる部分はまったく嫌味やくどさがなく、さわやかな笑いに満ちています。

 また、平凡で引っ込み思案でいじめられ役のケンイチが殻を破って見せるエピソード、かつてこれほど感動的な缶ケリがあっただろうか、と思わず大げさな表現を使ってしまいたくなるほど、素晴らしいシーンでした。ケンイチを抱えてピンチを迎えたとき、『そんなステキなエピソードを持ち出してピンチを切り抜けるなんて!』、というシーンも後半に出てきます。そのシーンにしても、唐突なようで、しっかりと冒頭から伏線を張っているため、まったく取ってつけたような違和感がなく、すんなりと受け入れられたのです。感動を引き出す演出もうまいな、と感心しました。

 ケンイチが密かに慕っていたベランダで絵を描く女性・ミドリ(田中麗奈さん)が、目が見えないという設定も秀逸です。目が見えないから、掟を破ることなくカンゾウとミドリが友だちになれるということなんですよね。それに、目が見えないことで後半のストーリー展開にも、ふくらみを持たせることが出来ていたと思います。

 そして極めつけのクライマックス。ついにカンゾウが掟を破って、人前に姿を見せてしまうことになる件、とてもスムーズで分かりやすい展開になっていて、不覚にも感動で震えてしまいました^^;) カンゾウが走り出しながら「父上殿」と繰り返すところなども、素晴らしく感動を盛り上げるリフレインになっていますし、見得を切って登場するシーンがビシッと決まると、感激してしまいますよねぇ。枝葉末節な細かいエピソードの組み合わせ方とか、ミドリやケムマキを含め、主要な役どころがバランスよく役割を振られているところとか、脚本もかなり練れていると思います。

 主役の知念侑李さんは、ジャニーズJr.なんですね。映画初主演だそうで、セリフ回しなどに学芸会ノリを否めないところもありましたが、脇役がうまい人ばかりなので、シラケるようなことはまったくありませんでした。もちろん、ハットリくん役の香取さんは、かなりキャラがはまっていて、好感度抜群でした。

 こんなに素晴らしい映画なのに、ファミリー向けという括りのせいか、話題作に比べていろんな意味で扱いが地味なのは残念です。安心してお勧めできる、ステキな映画ですよ。

 ついでに、感動的な音楽は服部隆之さん、こちらもハットリくんでした(爆)。

 もひとつおまけに小ネタを。産休で休んだケンイチのクラスの担任の先生。踊る大捜査線のスピンオフ特番『踊る大捜査線番外編 湾岸署婦警物語 初夏の交通安全スペシャル』でも、産休で休む交通課の婦警さんやってました。

●監督:鈴木雅之 ●原作:藤子不二雄A(コミック「忍者ハットリくん」)