一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

69 sixty nine

私的評価★★★★★★★☆☆☆

69 sixty nine プレミアムセット [DVD]

 (2004日本)

 1969年、長崎県佐世保の高校3年生のケン(妻夫木聡さん)は、仲間のアダマ(安藤政信さん)やイワセ(金井勇太さん)を誘って、ロックや映画、演劇を総合的にプロデュースする“フェスティバル”を開くことを決意します。動機は学校のマドンナ、レディ・ジェーンこと松井和子(太田莉菜さん)の気を惹くため。ところが、映画撮影のため8ミリカメラを借り受けようと、高校の全共闘のメンバーに交渉を持ちかけたところ、成行きで学校のバリケード封鎖を決行することになってしまいます。1学期の終業式の前夜、学校に忍び込んだメンバーは見事校内をバリケード封鎖し、至るところにペンキで挑発的なメッセージを書きなぐり脱出に成功しますが、ケンの思惑を超えて事は警察沙汰となり、メンバー全員補導されてしまいました。無期限の自宅謹慎処分を受けたケンは、フェスティバルの実行に再び意欲を見せますが、アダマはバリ封の経験から全共闘の活動に目覚め、またイワセはバリ封で警察に補導された責任を感じて無気力に陥ってしまったのです…。


 1969年という年は、ベトナム戦争反戦運動が激しくなり、大学紛争から東大で入試が中止された年なんだそうです。ボクはまだ6歳、幼稚園の年長組でした。監督の李相日さんも脚本の宮藤官九郎さんも生まれる前の時代ですが、劇中に流れるテレビ番組や、BGMにずいぶん懐かしさを覚えました。しかし、決して古臭くはない…かな? ま、行動の原点がすべてレディ・ジェーンのため、という単純明快なケンの巻き起こす騒動は、バカバカしくもあり、今でもフツーに大笑いできるエピソードの連続です。ただ、高校生は、いまでもこんなにエネルギーを持て余してるんですかね?という疑問はあります。そういう意味では、もはや古臭い青春グラフィティだったり…せんのかな?

 今時の若い人たちが、この映画をどう見るのか興味があります。ま、特別な共感は持たなくとも、フツーに大笑いするだけなのかな?

 ケンの父役の柴田恭兵さんが、けっこうシブいです。警察に補導されて家に帰ってきたケンが、泣きながら「殴られると思ったのに…」と言うと、縁側でひとり花火をしながら、明日学校で処分を受けるときには「胸を張っていろ」と静かに励まします。できた親父だと思い、ちょっと感動しました。

 ケンとアダマというイケメンふたりに引きずられて右往左往するイワセも、このドラマではいい味出してますね。全編ほとんど何をやってもダメっぽかったイワセが、最後に放送室をバリ封して占拠し、3年生を煽動して緊急集会を開かせるくだりは、胸が空きました。

 本作はPG-12ですが、小学生と見るのはかなり恥ずかしい描写やセリフが多々出てきます。高校生以上なら、笑って流せるのかも知れませんが、それでも女性と一緒に見て、大笑いできるかな…微妙な関係の方と一緒に見るのはやめといた方がいいかも。

 ボクの青春時代は80年代でしたが、なんか見終わった後、胸に甘酸っぱいような感傷が込み上げてきました。おもしろくて、懐かしい。そんな感じの作品でした。

 どうでもいいネタですが、ロッテファンのみなさん。再び「よしこ(菊地凛子さん)」発見! 茶の味も本作も、芸名は菊池百合子さんになってますが、まちがいありません。全共闘のアジトに集う、商業科のメガネの冴えない女の子のひとりです。気にし始めたら、ついつい見つけてしまいますね。

●監督:李相日 ●原作:村上龍(小説「69 sixty nine」) ●脚本:宮藤官九郎