一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

迷路荘の惨劇

私的評価★★★★★★☆☆☆☆

迷路荘の惨劇【リマスター版】 [DVD]

 (1978日本)

 昭和25年、恩人の篠崎慎吾(三橋達也さん)の依頼で、富士山の麓にある名琅荘と言う名の屋敷を訪ねた金田一耕助古谷一行さん)は、迎えに来た速水譲治(桑原大輔さん)の駆る馬車に乗って名琅荘に向かう道中、ジャケットの左の腕をヒラヒラさせながら歩く黒メガネにマスクの怪しい男を目撃します。20年前、名琅荘で当主の古館一人伯爵が猜疑心と嫉妬心に駆られ、妻の加奈子を日本刀で殺害、一緒にいた出入りの職人の尾形静馬の左腕を切り落とし、挙句、静馬の逆襲を受けた伯爵が返り討ちに遭うという事件が発生していました。静馬は洞窟に逃げ延び、死体は見つかっておらず、地元では『静馬生存説』がもっともらしく噂され、金田一たちが目撃したように、しばしばその異様な片腕の姿が目撃されていると言います。篠崎は、そんな事件の起こった名琅荘をホテルに改装するため、一人の跡を継いだ辰人(仲谷昇さん)から買い取っていました。そして、御祓いの意味を込めて法事を行うため、関係者を集めていたのです。古館辰人元伯爵、叔父の天坊元子爵、そして、篠崎の妻・倭文子(しずこ:浜木綿子さん)。倭文子は、一年前に辰人と離婚して篠崎と再婚しており、その経緯は辰人との合意の上でのことだったと篠崎は言いますが、金田一は悪い予感を覚えます。その予感は的中し、天坊元子爵が名琅荘の密室で殺害される事件が発生しました…。


 上川隆也さんの金田一で、リメイクされたのを先にDVDで見ています。ということは、この作品、放映当時に見ていないんですね。1978年の横溝正史シリーズ2の最後の作品となったものです。

 上川版、実は既に手元にDVDがないんです。手放した理由のひとつに、画質が妙に落ち着かない、ハッキリ言えば悪い、という点がある一方で、作品そのものがどうだったかとなると、イマイチ記憶にないというのが正直なところです。画質については、HDカメラの素材だと思うのですが、妙にデジタルなザラザラ感が目立ち、おまけに照明でキラキラする画がふんだんに出てくるため、余計にザラザラ感が増幅されるといった印象でした。フィルム素材の質感とは別物とはいえ、見ていて不快でしかなかったです。

 上川版では、篠崎が六平直政さん、倭文子が羽田美智子さん、糸女が野際陽子さん、古舘辰人が宇梶剛士さん、天坊元子爵が長門裕之さん、というキャストでしたが、この辺の配役も落ち着かないな、と感じたところではあります。特に六平さん、篠崎の成り上がり者としてのキャラは立っていましたが、下品な感じばかりが印象に残り、美しいロマンスを感じるには無理がありました。宇梶さんも、ちょっと元伯爵と言うには、気品が足りなかったですね。

 その点、横溝正史シリーズのキャストは、ボク的にはしっくり来るモノがあります。三橋さんの篠崎、バンカラな成り上がり者ながら、倭文子を心から愛しているという感じに全く違和感がありません。仲谷さんの辰人、狡猾な没落華族といった感じが実によく出ていました。浜さんの演技はあまりスキじゃないのですが、抑えた喋りなので、ギリギリ許せるかな…。宝塚独特のセリフ回しが抜けない女優さんて、いますよね。浜さんの場合は、肝っ玉母さんみたいな役なら似合うと思うのですが、他のキャラではどうもあの舞台から観客に向かって放つような喋り方が耳障りに感じてしまいます。涼風真世さんとか、真矢みきさんとかも、けっこうそういうところありますよね。天海祐希さんや黒木瞳さんは、さすがにその辺を感じさせないなと感心します。


 話がずいぶん脱線しました。

 本作、案外出来はよかったと思いました。ただ、あまり登場人物に肩入れできない印象の演出です。あっさり気味というのか、被害者にも加害者にも微妙にシンパシーを感じ難い。むしろ生き残った関係者にのみ、いくばくかの感傷を感じるかなぁ…というところでしょうか。

 糸役の千石規子さん、エエ味出してましたなぁ。深刻な殺人事件の起こる舞台に3代(篠崎を入れれば4代)に渡って寄り添う糸女、一度見たら忘れられない、カワイイおばあちゃんでした。特に日和警部(長門勇さん)との絡みは一服の清涼剤でしたねぇ。ところで、本庁の日和さん、今回の設定は静岡県警の日和さんだったのですか?

 最後に、ネタバレすれすれ。ラストシーンを飾る○○は…金田一も日和警部も、よくそんなところで笑ってられるなぁ…。

●監督:松尾昭典 ●原作:横溝正史(小説「迷路荘の惨劇」)

上川隆也さんの金田一は、ボク的にはピンと来ませんが、最近の金田一ではマシな方かな…キビしいですか?》

金田一耕助ファイル「迷路荘の惨劇」 [DVD]

金田一耕助ファイル「迷路荘の惨劇」 [DVD]

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2004/01/21
  • メディア: DVD