一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

八つ墓村

私的評価★★★★★☆☆☆☆☆

八つ墓村 [DVD]


 (1996日本)

 みなさんは、誰が演じた「金田一耕助」が好きですか?

 本作は、石坂浩二さんの金田一で5部作(「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」「獄門島」「女王蜂」「病院坂の首縊りの家」)を演出した市川崑監督が、豊川悦司さんの金田一で久々に横溝作品を手がけたものです。

 ボクの馴染みは石坂浩二さん(映画)と古谷一行さん(テレビシリーズ)ですが、好きなのは石坂さんの金田一です。「犬神家の一族」で初めて登場したときは、衣装とともに、原作で定型化している金田一のイメージである、蓬髪をかきむしってフケを散らす姿と、興奮すると飛び出す吃音癖で、一番原作の金田一に忠実な金田一を演出していたという印象でした。ただしかし、どうしても石坂さんの滲み出るインテリジェンスが、原作の金田一とは異なるようで、5部作が進むにつれて、次第に原作とはかけ離れた石坂さんの金田一が確立されていったように思います。

 最近のテレビドラマでは、スマップの稲垣吾郎くんとか、上川隆也さん、片岡鶴太郎さんなんかの金田一もありましたね。ほとんど見てないんですけど…。

 冒頭の戦国時代の落ち武者惨殺のくだりや、ナショナルの懐中電灯を鉢巻に二本刺した「鬼」が村人を猟銃と日本刀で惨殺するくだりは、けっこう見ていて気持ち悪くなります。それ以降のリアルタイムで進む事件の方は、比較的原作に忠実に、淡々とした展開で進みます。

 登場人物では、高橋和也くん、宅間伸さん、浅野ゆう子さんと、比較的若々しい役者さんが重要な役を演じています。トヨエツの金田一とともに、どこか軽さが感じられます。軽さ、というのか、「八つ墓村」は本来、おどろおどろしい作品(そう言えば、その昔、「たたりじゃあ、八つ墓さまのたたりじゃあ!」というのが流行りましたね、って、若い人は知らんか…)だと思うので、岸田今日子さんとか岸部一徳さん辺りが、一応脇を固めてはいるのですが、なんか、打ち消している感じがするんですね。原作の後半に出てくる鍾乳洞逃避行は、前半のおどろおどろしさからかけ離れたロマンスが描かれているので、そういう意味では、やはり、原作のイメージに忠実なのかも知れません。この辺はいろいろ意見が分かれそうです。

 ところで、トヨエツの金田一、絶対役作りで失敗してますよね? こんなの金田一じゃない、って、そう思いませんか? いい役者さんだと思うので、よけいに残念です。

●監督:市川崑 ●原作:横溝正史(小説「八つ墓村」)