言の葉の庭
私的評価★★★★★★★★☆☆
(2013日本)
鳴る神の 少し響(とよ)みて さし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ
6月、梅雨入り。靴職人を目指す高校1年生のタカオ(声:入野自由さん)は、雨の日の朝は決まって学校をサボり、日本庭園の東屋で靴のスケッチを描いていた。ある雨の朝、タカオはいつもの東屋で、朝から缶ビールを飲む年上の女性・ユキノ(声:花澤香菜さん)と出会う。「どこかで会ったことが?」とのタカオの問いに、一度は全否定してみせた彼女だったが、改めてタカオの様子を窺ったあと「会ってるかも...」とつぶやき、万葉集の歌を言い残して去る。この日を機に、二人は約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ね、心を通わせていく。しかし、やがて梅雨は明けようとしていた......。
圧倒的な映像美。さまざまに表情を変える雨の情景。水面に映りこみ、揺らぐ緑の木々。息を呑むほどリアルな陰影で彩られる人物の描写。
画面と、BGMと雨音だけでも十分と思える完成度。
ただ、ストーリーの細部はツッコミどころ満載。
でも、野暮なのでツッコまないことにしとくw
けど、1つだけツッコんどくか。
一回り(12歳)年下の彼氏とつき合ってるタカオのおふくろさんという、あざとい伏線w
仕事も歳も抱えてる悩みも、名前さえも知らないのに、どうしようもなくユキノに惹かれていくタカオ。
万葉の時代を想わせる二人の逢瀬。
鳴る神の 少し響みて 降らずとも 吾は留まらん 妹し留めば(返歌)
新海さんは、現代(あるいは未来的SFの世界)に古典的な要素を織り込むのが上手いと思う。
5.1チャンネル版はとても心地よい構成になっていると思ったんだけど、唯一クライマックスの雨のシーンで、リアルな音場の再現を狙いすぎたものか、階段で反響する二人の声が雨音とBGMにかき消され気味で、肝心のセリフが聞き取れなかったのが残念でした。1回目は雰囲気だけ楽しんで、2回目は2ch再生にしてセリフを確認するというのは、ちょっとイタい鑑賞の仕方だと思ったのです。
なんかしら、心に引っかかる、そんな佳作。
雨の日に、思索に耽るナルシストな自分には、合ってると思う。
※新海監督のことを何も知らずに、この作品をなんとなく見たのは11年も前だったか。
vgaia.hatenadiary.org
●監督・原作・脚本:新海誠