一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

秒速5センチメートル

私的評価★★★★★★★★★☆

秒速5センチメートル [Blu-ray]

 (2007日本)

秒速5センチメートル=桜の花びらが落ちる速度

第一話「桜花抄」
 東京の小学校に通うタカキ(声:水橋研二さん)とアカリ(声:近藤好美さん)だが、アカリの引っ越しにより離れ離れになる。中学校に進学したタカキは、大雪の日、電車を乗り継ぎ、アカリに会いに行き…。
第二話「コスモナウト」
 種子島の高校生、カナエ(声:花村怜美さん)は、中学時代の編入生のタカキに想いを伝えられずにいた。
第三話「秒速5センチメートル
 東京で社会人になったタカキは仕事に追われる毎日。ある日、彼は忘れかけていた以前の自分をふと思い出す。(WOWOWの番組内容から引用)


 新海誠監督の劇場版アニメ第3作だそうです。

 ディテールにこだわる圧倒的な映像美と、えっ!?と思うほどあっさりとしたタッチで描かれた登場人物との対比を見て、何ともいえない違和感を覚えた。なんだこれは?
 第一話を見進めるうち、なんとなく、それが親の事情で離れ離れになる子どもたちの非力さだとか、どうしようもなく胸に迫る絶望感みたいなものを強く感じさせる要素になっている気がした。第二話以降、高校生~大人になっていくにつれ、人物描写がしっかりとしてくるのを見て、作者の意図したものなのでは?と思った。
 小学生時代、あまり近所に仲の良い友だちがいなくて、ほぼ一人遊びで過ごすことの多かったボクは、高学年になって歩いていける距離に住むクラスメイトと仲良くなった。しかし、仲良くなったのもつかの間、彼は転校して行ってしまった。大人の今なら、全然大した距離でない市内の転居だったが、小学生時代のボクには絶望的に遠くへ彼が離れて行ってしまったと感じた。この映画を見て、思い出してしまった。

 独白で進められるストーリー。これもセカイ系というのかしら?
 青臭いとも思える中学一年生のタカキが選ぶ言葉は、病弱な小学生時代に図書室通いをしていたおかげか、まったく子どもらしさを感じさせない耽美性をかもしている。
 独白ばかりだと、見ている側にはほぼ一通りの解釈しか許してもらえないと思うんだけど、タカキやカナエの心の揺らぎに感情移入できるかどうかで、この映画の感想は大きく変わるのかもしれない。ボクは、ハマった。

 この短編集は、忘れていた昔の感情、胸を締め付けられるような切なさだったり、伝えられなかった想いだったりを思い起こさせてくれる。そして、それらすべてを浄化し、今ある自分を肯定してくれる、そんな気がした。


<以下、第二話以降の雑感>
 第二話は、なんで旧ソ連の宇宙飛行士の呼称〝コスモナウト(Kosumonauto)〟なんでしょうね? アメリカの宇宙飛行士の呼称〝アストロノート(Astronaut)〟でもなく、英語読みの〝コズモノート(Cosmonaut)〟でもなく、なんでか?

 第三話は、完全に山崎まさよしさんの〝One more time, One more chance〟のMVになってますw この曲が流行ったとき、さんざんカラオケで歌い倒して、その瞬間だけ女子のアツい視線を独り占め…してたら良かったんだけど、ビジュアルがビジュアルなだけに、「目をつむって聴いてたらゾクゾクするくらいイイのに」って条件付きでしか評価してもらえなかった残念な過去を思い出しました。そんな人生ですわ^^;


●監督・原作・脚本:新海誠