一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

ローレライ

私的評価★★★★★★★☆☆☆

ローレライ スタンダード・エディション [DVD]

 (2005日本)

 広島に原爆が投下された1945年8月、海軍浅倉大佐(堤真一さん)の密命で絹見少佐(役所広司さん)は、降伏したドイツから密かに持ちこんでいたUボート・伊507号に乗り込み、第二の原爆投下を阻止することになりました。潜水艦には水中の様子を視覚化して見せるという、最新式の探査システム・ローレライが積まれていましたが、その潜水艦との戦闘で撃沈された米海軍の間では、魔女の歌う子守唄が聞こえるという噂が立っていたのです。


 平成ガメラシリーズで特撮監督を務めた樋口真嗣さんの、実写映画監督デビュー作なんだそうです。そう聞くとですねぇ。ちょっと残念でした、とダメ出ししたくなりました。

 まず得意の特撮の方なんですが、戦闘シーンの迫力は、さすがと思いましたけど、東宝特撮映画でよく感じる「実写映像とCGの組み合わせのためにコントラストを捨てている」画作りはいただけません。なんで白飛びしまくってるの? 同じ海洋特撮シーンのあるリーグ・オブ・レジェンドの、ノーチラス号の映像は断然キレイでしたよ。高い銭かけて、多くの人と時間を割いてるくせに、なんか納得できないんだよなぁ。特撮映画だから、この程度のクオリティでいいか、みたいな妥協してませんか? HD映像時代に入ろうかというのに、元の映画の画質が悪いんじゃ、ガッカリですよ。

 次、人間ドラマの方です。薄い! 正直言って、群像劇に振っているのか、ドラマ部分が薄いです。艦長の絹見少佐がカッコよく見えても、どっぷり感情移入しきれるほど人間性を語るエピソードが出てこないし、折笠(妻夫木聡さん)とパオラ(香椎由宇さん)の関係はどうなるんだというところも掘り下げようのない展開だし…いやいや、もっとも重厚かつ重要なテーマであるはずの、浅倉大佐のエピソードがエラくどうしようもなく自己完結ぎみにしぼんでしまって、いったいこの映画のテーマはどこに振られておるのだ、と首をかしげたくなるのです。

 が、しかし。こんなにダメだしをしたくなるということは、作品的にはかなり面白かったということの裏返しなのです。作品は、実写の戦争映画ながら、早いうちの途中で「あ、ガンダム」と思ってしまいました。設定も関係も違いますが、折笠とパオラが、アムロララァに見えてきたのです。ファンタジーやん。そうか、ファンタジーに小理屈はいらんのやね。感じて、楽しめ、ってか? ドラマ部分の掘り下げが希薄なんだけど、芸達者な出演者の演技のおかげで、決してストーリーがたいくつなことはありません。ま、良くも悪くも、フジテレビの噛んでる、しかも踊る〜の亀山千広さんの製作ですから、エンターテインメントとしてのツボは押さえている、ということでしょうかね?

 あ、モーツァルトの子守唄、パオラが歌って、それを聴いた乗員が涙するシーンがありましたが、ボクもほろりときました。美しい歌声を効果的に使っていました。

●監督:樋口真嗣 ●原作:福井晴敏(小説「終戦のローレライ」)